最高顧問三遊亭圓歌、ゆめじ・うたじの漫才2012/10/01 01:52

 三遊亭圓歌である。 67年やっちゃったよ、楽そうに見えるけれど、大変な んだから、こっち来てやってごらんなさい。 横に戒名が出ている、こないだ 「ダンカ」って読んだ奴がいた。 山のアナをやれっていうけど、山のアナア ナ、45年もやっている。 目の前に相当の年寄がいて、どっかで見たことがあ るなと考えていて、落語忘れちゃった、あとで楽屋に来て、「しばらくでした、 中沢さん」、同級生だった。 千代田区に断りに行った。 まだ稼いでいるんだ から、年金を働いてない人や困っている人に回して下さいって。 生まれて初 めて、嘘ついた。 そういう訳にはいかないという。 二三ン日したらアンケ ートが来た。 「一人で歩けますか」「紙オムツはいりますか」

 死んだ志ん朝が、死ぬ四日前に電話かけてきた。 兄さん、仏壇の宣伝やっ てみない? 二三ン日、考えさせてよ、と言ったのが、最後の電話になった。  小さんが「あっしもボチボチ」というのをやって、圓楽が線香の宣伝をやって いた、私が仏壇をやったらどうなっていたか。 もう83だよ。 米丸、大阪 に春団治、松之助と、同じような歳がいて、「全部合わせて三百何歳」という会 があった、その横に「二度と聴けない」。 松之助は笑福亭、弟子の方が有名で 明石家さんま、笑福亭はつけられないというので明石は松之助の本名、サンマ の開きをつくっていた家だから「さんま」。

 つづいて、大瀬ゆめじ・うたじの漫才。 初めて見たが、最近の漫才と違い、 よくわかる。 今日は一杯の入りだけれど、ふだんの平日は違う。 舞台より 人数が多ければまだいいが、二人は困る。 あっちに一人、こっちに一人では、 やりにくい。 ステーキハウスに夫婦と子供2人で行った。 子供がどうして もハンバーグがいいというので、4つ注文。 自分だけ割箸を頼んだら、50円 高かった。 割箸料金。 そこから割箸の能書きになる。 丁六、小判、元禄、 天削(てんそげ)、利休。 丁六は原木から切り取って割れ目をつけただけ、小 判は丁六の角を取って持ちやすくしたもの、元禄は割れ目に溝をつけて割りや すくしたもの、天削は頭(天)を鋭く削り、先を面取りしたもの、利休は中央 部をやや太くし、両端を細く削って、面取りしたもの。 なぜ「ハシ」という か。 渡る橋、鳥の口ばし、木の端、と諸説あるが、ともかく箸は日本文化を 支えている。 最近、箸を持ち歩く人が増えている。 群馬県が一番多い。 前 橋市。 昔風の漫才、寄席は、こんなに勉強になるのである。

市馬、正蔵、小三治と続く2012/10/02 00:46

 ここから市馬、正蔵、小三治と続くのだから、こたえられない。  柳亭市馬は「一目上り」。 ご隠居の趣味はと聞けば、書画。 寿司の横にあ る。 あれはショウガ。 へこの間(へこんでるから)の掛けもの、笹の葉の 塩漬け? 雪折れ竹だな、「しなわるるだけはこらえよ雪の竹」としてある。 お つな都々逸だね。 賛だ、けっこうな賛でございますと褒めれば、みんなお前 をたっとぶ。 お茶漬で…、かっこむ。 大家さん、化け物ある? 掛物だろ う。 字ばかりだね。 私が褒めるんだから、読んでくださいよ。 けっこう な賛で。 賛じゃない、詩だ、根岸の亀田鵬斎先生の詩だ。 お医者の先生、 談判したい。 ご恩返しに風邪でも引こうかと思うが、ご無沙汰で。 掛物を 見せて下さい。 掛物にご執心か? 宗旨は法華で。 いささか大幅だ。 中 は白餡。 けっこうな詩で。 詩じゃない、悟ですよ。 一休禅師悟りの悟だ。  一目っつ、上がってるんだ。 留公んちへ行こう、ヨッ けだもの。 すごい挨 拶だな。 船におじさんが乗っている絵だな。 太った腹を出して袋を担いで いるのは? 唐土四明山の布袋和尚だ。 モロコシと金山寺味噌を盗んだふて え野郎だ。 いい六だな。 いや、七福神だ。 横にある短冊は何だ? 古池 や蛙飛びこむ水の音。 いい八だな。 いいや、芭蕉の句だ。

 正蔵は「鼓ヶ滝」。 正蔵のこれは、以前落語研究会で聴いて、教養添削落語 「鼓ヶ滝」<小人閑居日記 2005.11.27.>に書いているので、興味のある方は ご参照を。 今回は「ニワトリがコケコッコーと鳴いたから、昼のご飯はケン タッキー」とやって、白鳥の落語のようだ、と始めた。 前に「感心しなかっ た」と書いた「永谷園」を、まだ使っていた。

 小三治は「小言念仏」、さすが一番の拍手だった。 わからない世の中だ、中 国、韓国の問題。 新宿区の住まいから外苑の方へ行くのに、四谷四丁目の交 差点を通るのだが、左に曲がったところに韓国大使館がある。 いつもあるバ リケードが役に立っていた、お巡りが何か言っているが、聞こえない。 右翼 が家賃の高そうな馬鹿でかい街宣車で「ジャンジャンジャカジャカ」と軍艦マ ーチ、「自民党、手前えら、どっかへ行け」と怒鳴っている。 どこの味方か、 わかんなくなっちゃった。 五月蠅いけれど、言っていることは確か。(と、お 茶を飲む)

 信心深い人は、仏壇の前でお念仏を唱える。 小さんも、キンコンカンと何 かやっていた。 日蓮宗、どうも信心深いとは思えないけれど、毎朝、歯を磨 くのと同じなんでしょう。 と、扇子で木魚を叩きながら、小言念仏に入る。  これが、最高に可笑しかった。 南無阿弥陀、南無阿弥陀、赤ん坊が這って来 た。 こっち来るよ。 ツラ覗き込んで、変な顔してる。 ナムナムナム、バ ァー。 考えてる。 気をつけろ! 首かしげたまま、動かない。 やっちゃ った。 鉄瓶の湯、こぼして、拭け。 そうじゃない、畳の目なりに拭くんだ。  おつけの実、何にしましょう? 表に、ドジョウ屋が来たぞ。 大きい声で、 呼ばないと…。 ドジョウ屋! ドジョウ屋――ッ!  南無阿弥陀、南無阿 弥陀!

志ん陽と文菊、真打昇進襲名披露口上2012/10/03 01:17

 いよいよ、口上だ。 市馬の司会で、上野のパンダを思わせる志ん陽と、い い男の文菊、二人が噺家の中の噺家と言われるようになれますように、と。

 最高顧問の圓歌、少し曲がっているが、しゃべりは確かだ。 小三治会長が 「俺が見つける」といった大抜擢、ウインドに二人を並べた、いい若手が出来 たな、と言ってもらえるようになれば。 真打は、ローソクを二本立てて、や っていた頃、トリが下げを言って頭を下げ、お客様が帰ったところで、ローソ クの芯を打つ。 よきライバルの誕生だ、手を取って共に登らん花の山。

 小三治。 という訳でございまして、抜擢に、理事十何人も諸手を挙げてく れた。 もう一辺、よく見たら、先の長い成長ができるものを、汲み取った。  ゴールではない、予選通過、本選がヨーーイ、ドンといったところ。 五年、 十年、二十年、三十年先に、どんな大木になるか、これをご縁に、ご贔屓にし て、心にかけて頂きたい。 あいつだよ、あの時の、と、あとを押して頂きた い。 あとの責任は負いません。 当人の心がけ、腕次第。 温かく、見守っ て頂きたい。

 両名の師匠、まず志ん橋。 志ん陽、見た目はほんわか、ぼんやりして、は っきりしない、つかみようがない。 むきになって聴こうと思わないで、付き 合ってやって頂きたい。

 病気療養中、リハビリ中の圓菊に代り、一門の長、伯楽。 志ん生の流れを 汲む一派。 真打はみんな商売ガタキ。 なかなか助言がもらえない。 気が 付いたことがあったら、言ってやって下さい。 それも電信柱の陰とかでなく、 小料理屋で、伯楽も連れて来いと言って。

 小三治の音頭で三本締め。 一本目は、二人のために。 二本目は、お客様 の健康と商売繁盛、その他もろもろに。 三本目は、世界の平和のために。

小菊の粋曲、志ん陽の「壺算」2012/10/04 01:50

 口上のあとは、柳家小菊の粋曲。 「柳橋から小舟に……土手八丁」で始ま り、「寄席のスタンダード・ナンバー への八番」という「かえるぴょこぴょこ ……へびがにょろにょろ……なめくじがぬらぬら」。 『長崎ぶらぶら節』のあ と、季節の『淡海節』「秋が来たので つばめは帰る 後に残るは 萩桔梗 月 がさす よいしょこしょ 虫のーー声のォーーエーー よいしょこしょ」。  仕舞はお目出度い唄『せつほんかいな』、「獅子は せつほんかいな 獅子は 喰わねど 獅子喰い喰いと 雨やあられや かんろばい ぞろりぞろりや ぞ んぞろり 目出度いな 目出度いな/橋は せつほんかいな 橋の欄干に 腰 打ち掛けて 向う遥かに見渡せば 弁天 松島 小松島 キュッキュと立った は アリャ何じゃ あれかいな あれかいな/昔々その昔 義経さまは 静御 前を伴に連れ 吉野を指して 落ちたもう ヨンボリヨンボリ ヨヨンボリ  烏帽子狩衣 烏帽子おり ぞろりぞろりや ぞんぞろり 目出度いな 目出度 いな」 

 いよいよ、新真打の一人、古今亭志ん陽の登場である。 お達しを頂いてか らの準備が大変、だんだん自覚が出て、成長しているのを感じる。 が、スト レスたまって、痛風になっちゃった。 披露の先に出たから、運がよかった、 気をつけている。 食事制限で、打ち上げの初日鰻屋、二日目焼肉、食べられ ない、金出しているのに…。 100キロあったのが、4日で5キロ痩せた。

 買物上手の留さんを、人間がこすっからいから、うまくおだててと、おかみ さんに知恵をつけられた与太郎風の男。 そのままやったが、留さんは水がめ の買物を付き合ってくれる。 天秤棒を持って行く。 二荷のカメが欲しいの だが、一荷3円50銭のを、安いなー安いとおだてて、手いっぱい3円にまけ させ、荒縄で縛って「差し荷い」にしてもらって、店を出、あたりを一周して 戻る。 馬鹿な話じゃないか、こいつ途中で二荷のカメが欲しかったと言うん だ。 倍ですから7円……、エッ、倍で6円、1円も差が出てしまう。 今日 は完敗、今度は体調のいい時に、また勝負しましょう。 一荷のカメは、下に 取ってくれ、3円。 ハナに3円払ってあるから、合わせて6円、このカメ持 って行ってかまわないよな。 亀どん、「差し荷い」にして差し上げて。

 すみませーーん、お客様、お戻りを。 勘定が合いませんので。 どうなっ てんの。 さっきは合ったように思ったんですが…。 ハナ3円、一荷のカメ を3円で下取るんじゃなかったのか。 はい、手前が間違っておりました。 手 前も納得いたしました、有難うございました。 すみませーーん、どうも合わ ないんで、商売をしたという満足感が得られない。 そろばんを入れてみろ。  では、原点に立ち返って。

 「壺算」、志ん陽のガラにも合って、なかなかよかったが、時々与太郎が横か ら口をはさんで、計略が破綻しそうになるあたりの可笑しさを、今一つ強調す る工夫が必要だという気がした。

正楽の紙切りと、文菊「甲府い」の前半2012/10/05 01:02

 間に、林家正楽の紙切りがある。 客の注文を受ける。 「イグアナ」と聞 こえた人、正楽が確かめると「菊の花でーす」。 変な客がいたと言う、「とり あえずビール」の注文。 なぜ身体を動かしながら切るか、身体を動かさない と「暗くなる」から、とやってみせる、照明も落として。 「優勝力士」、「幽 霊」、「小言念仏」。 「幽霊」は地面を切って、宙に浮かせ、「小言念仏」は横 に赤ん坊を這わせた。

 楽屋からも拍手が聞こえ、いよいよトリ、お目当て新真打・古今亭文菊の登 場となった。 例によって扇子を突き出した、気取った出だ。 客席も独特の 雰囲気だが、楽屋も小三治会長始めお揃いで、緊張感が漂っている。 ようや っと、ここで一人っきりになれた、と。

 「ひもじさと寒さと恋をくらぶれば、恥ずかしながら、ひもじさが先」。 金 公、よさねえか、ひっぱたくな。 豆腐屋の店先で、卯の花に手を出して、金 公にぼかぼかにされた旅の人、訳を聞けば、腹がへって一文なし、国は甲州、 甲府、昨日浅草の観音様をお参りし、仲見世でどーーんとぶつかられたら、財 布がなかった。 頭突きってんだ。 手を上げてくれ、すまなかったな、金公、 人はいいが、手が早い。 宗旨を聞けば法華という、うちも法華だ。 飯食い な、ばあさん、おかずは生揚げでもなんでもいい。 オハチにお目にかかりま す。 手盛りでやってくれ、といわれて、炊いたばかりを二升、空にした。

 聞けば、なんとかなるまで国に帰らないと、身延山に三年の願掛けをして出 て来た。 あてはない、葭町の口入屋へ行くつもりだったという。 ウチで働 いてみないか、売り子がいないんだ。 善吉の善さん、この家の売り声「とー ふぃー、胡麻入り、がんもどき」で歩くようになる。 愛嬌者で、洗濯の水を 汲んだり、子供が泣くと懐の一文菓子を出したりして、たちまちかみさん連中 の評判を得る。 (いい人ね、と襟を合わせる仕草、前にも書いたが、女が得 意らしい。) 大嫌いと言って、言い過ぎよ、と言われるお咲さんなどは、夜も 眠れないという。 夢の中に出てきて、豆腐を食べさせようとする、私は夫の ある身……。 かみさん連中が味噌漉しを持って並んで、「行列のできるトーフ 屋さん」。 災難なのは亭主たちで、三度三度豆腐は勘弁してもらいてえ、湯に はいったら、フーーッと浮かんだ、と。