西新井大師吟行の句会で ― 2013/05/11 06:52
草だんごは、句会をやった武蔵屋でなく、「声張り上げて売られ」ていた江戸 は文化年間創業という中田屋で買った。 武蔵屋は割烹というだけあって、得 意先の築地魚河岸卸売各社の名が入った大きな木彫の額があったりする。 句 会場も立派、二段重の弁当も、最近よくある幕の内風とは違い、きちんと作っ ていて、古き良き時代を思わせる結構なものだった。
さて、その句会だが、私の選句は次の七句。
惜春や一ト駅だけの大師線 英
午過ぎてよく泳ぐなり五月鯉 英
蓬餅声張り上げて売られけり 洋太
思はざるほどの丸さに大でまり 洋太
藤棚の真ん中にゐる昏さかな 洋太
樟若葉一粒ずつの光住み 孝治
藤の寺ドドンと響く稚児太鼓 啓司
拙句の結果は<改札のない駅に降り春のどか>を初参加の倉田さん、<江戸 文化創業といふ草だんご>を英先生、<若きブッダ悟りし菩提樹若葉なり>を 洋太さんと善兵衛さん、<樟若葉下に鳥塚木遣塚>を英先生・啓司さん・孝治 さん、<本堂のガラスに映る新樹かな>を英先生、<線香に負けず芍薬香るか な>を洋太さんが採ってくれた。 英先生選が三句、互選六票の計九票、まず まずの成績だった。 英先生の選評。 <江戸文化創業といふ草だんご>…いかにも老舗、落ち着 きのあるたたずまい、「江戸文化」は損、文化・文政、「化政度の」という言葉 がある。 <樟若葉下に鳥塚木遣塚>…リズム感、塚がどんなものか、はっき りさせる必要はない、江戸木遣りの塚なのだろう、「の下(もと)」もある。 <本堂のガラスに映る新樹かな>…奇を衒ったところがない、だが凡庸な景色 ではない、ガラスが入っているのは都会の大きな寺、まわりに木立がある、そ の新緑がガラスに映り込んだ、そう味わうことができる、いい句が得られた。
私が選句した句の評。 <蓬餅声張り上げて売られけり>…面白い句、蓬餅 はそんなふうに売るもんじゃない、郊外が今は都会の真ん中になってしまった、 ちょっと皮肉もあって、そうした光景を楽しんでいる気分。 <藤棚の真ん中 にゐる昏さかな>…俳句の勘所を押さえた句、「真ん中」は「中ほど」の方がい い、けざやかにいうより、ゆるやかにいう。 <藤の寺ドドンと響く稚児太鼓 >…「稚児太鼓」という言葉があるかどうかわからないが、存外たくましい音 を出していたのを、よく捉えた。
総評。 目指したいのは…、虚子先生に「平明にして、余韻のある句」とい う言葉がある。 「採らぬ親切」ということがある。 落とすことに気を遣う。
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