歌武蔵の「五貫裁き」前半2013/06/09 07:43

 黒紋付のトリでも歌武蔵は、「只今の協議について」で始めた。 名奉行、遠 山の金さん、この桜吹雪の彫り物が目に入らないか、のべつ桜なのはマンネリ。 季節考えろと、夏は朝顔にしたら、昼には萎んでいた。

 見舞いに来てくれたのは、大家さんだけ、友達がいない、博打うちの使いっ 走りはやめて、かたぎになろうと思う。 八百屋をと思うが、すっからかん、 大家といえば親も同然、元手をいくらか出して下さい。 俺にまかしとけ、奉 賀帳を作ってやろう、初筆が肝心だ、端(はな)の家でたんと書いてくれると うまく行く。 金持、物持の所へ行け、そうしたら、俺が助けてやる。

 八公、どうした、額から血が出ているぞ。 えれえ目に合った、徳力屋へ行 った。 評判のしみったれだ、何であんな所へ行ったんだ。 亡くなった爺さ んが顔役で、徳力屋が潰れそうな時に、助けたことがあった。 番頭が三文と 書いた、すると旦那の万右衛門が出て来て、三を消して一にしたんだ。 つか みかかると、持ってた煙管で額をピシッと打たれた。 傷に薬を塗れ、願書持 ってかっこめ、御奉行所へ、南、大岡様が月番だ。 駆け込み願い、三日目に お呼び出し、落着(らくじゃく)の言い渡しとなった。

 徳力屋万右衛門は言う、私の持ってる煙管に八五郎が頭をぶつけて来た、渡 した一文銭を投げつけた、と。 天下の通用銭を投げつけるとは、不届きであ る、八五郎に五貫文の科料金を申付ける。 五貫文? 五千文、一時(どき) にですか。 一日一文でよい、そちは独り者か。 徳力屋、何かの関わり合い だ、八五郎の売上の一文を、毎日奉行所に届けるように。 家主には、立会人 を申付ける。

 大家は、明日から一文俺が渡してやるから、どこにも出かけちゃあいけねえ ぞ、面白えことになって来た、と。

 夜も明けない内に、八公、大家だ。 お早うござんす。 一文持って来たぞ、 今すぐ行くんだ、寝ててもいい、半紙に一文の受取を書いてもらうんだ。 夜 も明けない暗い時間、日掛けの一文、持って来ました。 御奉行所に納める大 事な一文、半紙に一文の受取を書いて下さい。 半紙代も、かかる。