馬石の「崇徳院」2013/07/02 06:31

 薄緑の着物に黒の羽織、小駒とちがい違和感がない。 気の病、毎日食べる ものに困るという。 朝パン、昼そば、夜ご飯。 朝パン、昼ご飯、夜そば、 といったパターン。 はずれがないのが、カレー。 朝パン、昼そば、夜カレ ー。 先日、昼にカレーそば(うどん?)食べた。 夜、困った。

 「崇徳院」はお馴染の噺である。 若旦那が患って二十日、いろんな先生に 診てもらったが、わからない。 ある名医が、腹に思っていることがあるから だと言ったが、本人は誰にもしゃべらない。 五日食べてない、あと五日しか もたないかもしれないと、気心の知れた出入りの熊さんが呼ばれる。 大きな 声でなく、小さな声で聞いてくれと、言われていたのに、「ドーシマシタ!」と 大声。 二十日前、上野の清水様の茶店でお嬢さんを見て、びっくりした。 目 が一つ? 水が垂れるような。 蜜柑を踏んづけたような? いい女のことを、 水が垂れるようなという。 ドイツ語で? お嬢さんが茶袱紗を落としたのを 拾ってあげると、短冊を渡して、帰った。 「信あれば徳あり」、上野の清水様 のことだ。 短冊には「瀬をはやみ岩にせかるゝ滝川の」。 短い都々逸ですか?  崇徳院様のお歌、下の句は「割れても末はあわんとぞ思ふ」。 それ以来、鉄瓶 も、掛軸の達磨も、熊さんの顔も、みんなお嬢さんに見える。 恋わずらいと、 判明するが、どこの誰かがわからない。

 旦那に、蜜柑を踏んづけたようなお嬢さん、と報告すると、水の垂れるよう な、と親子だから同じことを言う。 探し出したら、三軒長屋をそっくりあげ る、草鞋をありったけ持って行け。 倅はあと五日しかもたない、三日で探せ、 万一のことがあったら、お前は倅の仇だ。

 家に帰ると、かみさんは、お店(たな)の話ってのは、草鞋を売って来いと いうのかい。 三軒長屋と聞いて、早く行っておいで、大家さんになれる、こ の草鞋も持ってと首から下げさせ、荒物屋の店先のようになる。 見つけない で帰ってきても、家に入れないよ。  歌を読んで歩く。 一つちょうだい。 売り切れで。 大勢、子供がついて くる。 三日たっても、見つからない。

 そうだ、人が集まる所だ、床屋、湯屋。 床屋が空いていれば、ハイさよな ら。 五六人つかえていると、喜んで、ドブ掃除みたいな人。 煙草を喫って、 「瀬をはやみ…」とやる。 すると、ウチの娘がそればかりやっているという 人がいた。 ご器量は? 近くでは、鳶が鷹を産んだようだと。 水が垂れま すか、蜜柑を踏んづけましたか。 いや、こないだ大福を踏んづけたけれど。  おいくつで? 八つ。

 床屋三十六軒、湯屋に十八軒、ヘトヘトになって、顔はヒリヒリ、頭はツル ツル。 そこへ、お店のお嬢さんが恋わずらい、相手がわからず、見つければ、 酒樽が三十樽、祝儀はどれだけ出るかわからない、明日は四国へ探しに行くと いう男が現れる。 お互いに、自分の方に連れて帰ろうとして、取っ組み合い となり、床屋の鏡が割れる。 文句を言う床屋に、心配するな「割れても末は あわんとぞ思ふ」。

 馬石、「蜜柑を踏んづけた」「ドイツ語で」といったクスグリの間が絶妙で、 上々の出来だった。

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