福沢諭吉と商売〔昔、書いた福沢3〕2013/07/15 06:23

 〔昔、書いた福沢〕というのを始めて、2回でそのままになっていた。 連 日の暑さで、書きたいことはいろいろあるのに、まとめて書くのが少し億劫に なり、何か手はないかと考えていて、思い出した。 2回というのは、桃太郎 悪者論〔昔、書いた福沢1〕<小人閑居日記 2011. 10. 10.>と、「巧言令色ま たこれ礼」〔昔、書いた福沢2〕<小人閑居日記 2011. 12. 21.>だった。  ハガキ通信時代の「等々力短信」に、〔福沢諭吉と商売〕というシリーズを7 回書いていた。 1978(昭和53)年7月から79(昭和54)年2月だから、私 は37歳、いかにも生意気な若書きだが、それを引いてお茶を濁すことにする。

    等々力短信 第118号 1978(昭和53)年7月5日

〔福沢諭吉と商売〕1 福沢にはすぐれた商売のセンスが?

 毎月、初めの回に福沢諭吉と商売というテーマでしばらく書いてみようと思 う。

 福沢は自ら商売は不得手、不案内であるが、商売の趣意を知らないわけでは ない、その道理はひととおり心得ているけれど、売買貸借はなにぶんウルサク てめんどうだからやる気がない、と自伝に書いている(七-217)。 明治の初 期、福沢が音頭取りをしたり、アイデアを出したりして興された新事業も多い し、門下から幾多の実業家が輩出しているところをみると、福沢にはすぐれた 商売のセンスがあったのではないか。 かりに実業界に身を投じていれば、こ の分野でも大きな足跡を残したに違いないと思う。

 そのへんのところを具体的なエピソードを拾い集めながら考えていってみた い。(引用は特に断らないかぎり岩波書店刊二十二巻本の『福澤諭吉全集』を使 う、七-217は同全集七巻217ページ)