スタジオジブリの人選は独特2013/07/28 06:31

 宮崎駿監督の『風立ちぬ』を観た後で、日本テレビの「笑ってコラえて!」 がスタジオジブリの製作に密着した番組を見た。 宮崎監督は、説明や謎解き をしない人だから、映画を観てもわからないことが多い。 今回は特に、時代 背景やゼロ戦など戦闘機のことを知らない子供が観ても、まったくわからない のではないか、と思った。 テレビのメイキングのドキュメンタリーを見て、 納得したことがいくつかあった。

 日本テレビの密着担当は、スタジオジブリへ行き、まず社長に会いたいと、 大きく出た。 なぜ、そんなことが許されるかというと、宣伝になるのはもち ろん、この作品を提携してつくった会社の一つが、日本テレビだからだ。 全 部書けば、「スタジオジブリ・日本テレビ・電通・博報堂DYMP・ディズニー・ 三菱商事・東宝・KDDI 提携作品」。 いくらずつ出資して、利益はどう配分 するのだろうか。

 そして出て来た社長は星野康二さん(57)、もっぱら営業を担当するという ことで、名刺の裏にはジブリの作品が並んでいた。 ディズニー・ジャパンの 社長、会長を務めた方だという。 それで思い出した。 スタジオジブリでは、 どうも鈴木敏夫さんというプロデューサーがエライらしいと読んだ、鈴木さん の『仕事道楽 スタジオジブリの現場』(岩波新書)に星野さんの社長就任の話 があった。 2008年2月、映画のプロデュースは鈴木さん、経営は星野さんが みるという体制ができた。 星野さんは1994年、ジブリ作品のDVD発売の提 携を申し込んで来て、それが1996年から実現する、それ以来の付き合いだそ うだ。 星野さんがディズニーを離れると知って、2007年5月鈴木さんが社長 就任を願い、ひたすら待って、3か月後くらいに内諾してもらったという。

 宮崎駿監督、鈴木敏夫プロデューサーの人選は、独特のものがある。 『風 立ちぬ』で、堀越二郎の声をやった庵野秀明さんは、『風の谷のナウシカ』(1984 年)でクライマックスの巨神兵の原画を担当、2006年株式会社カラーを設立、 自社製作の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズでは、原作、脚本、総監督、 エグゼクティブ・プロデューサーを務めている。 宮崎監督は、「国内で一定数 の社員を抱えているアニメーションの会社は、ジブリ以外では『カラー』ぐら い」「作品づくりに力を尽くし、次世代の人材を育成しようと、塗炭の苦しみを 味わっている。」「庵野は飾らず、時代を精いっぱい生きている。現代で、堀越 二郎に一番似ているのは彼だな、と思ったんです」(朝日新聞7月20日朝刊)

草軽ホテル(万平ホテルと、上高地の帝国ホテルを足したような感じだった) に滞在している謎のドイツ人カストルプの声に起用したのは、スティーブン・ アルバートさん(62)だ。 ディズニーから来た元ジブリ社員で、15年間、ジ ブリが「世界のジブリ」になる仕事をやってくれたという。  『風の谷のナウ シカ』などは、外国で勝手に編集されている状況だった。 その権利を取り戻 した。 そのアメリカ人をドイツ人に起用し、ドイツ語で『会議は踊る』を歌 わせた。 まさかの大音痴だということが発覚したが、懸命に練習し、声を重 ねる風間杜夫にも救われて、下手だけど堂々としているという評価を得て、嬉 しそうに帰って行った。