圓太郎の「三年目」後半2013/11/10 06:16

 案の定、親戚のおじさん達が、跡取りをどうする、黙って嫁を取れ。 後添 はいりません。 女中に手をつけて、ポンポコランにすることになるぞ、わが 家は代々、そういう家系だ。 これならどうだと、若くてとびきりきれいなお 嬢さんを見つけてきた。 初めての夜は、神事で、仲人の奥さんが床盃(とこ さかずき)を持ってくる。 酒が入ると、先に進むことになる。 お時さん、 慣れないことばかりで、くたびれたでしょう、先にお寝なさい。 あなたから、 お休みください。 私は、もうちょいとやる事がある。 早くお寝なさい、起 きていると、出ますよ。 (お嫁さんが、恥ずかしそうにする。) 身体をねじ るようなことじゃない。 先祖代々、こうして来たと、二人の間に紐で線を引 き、背中合わせに、おやすみなさい、となる。 こんな器量のよいお嬢さんを、 白粉の匂いも、たまらないね。 ボーーン、と八ツの鐘。 お花、いるんだろ、 出ておいで。 隣の家に飛び込んだんじゃ、ないだろうね。 明るくなってき たよ。 ニワトリが鳴いている。

 二日目、三日目も出ない、ひと月経っても、出て来ない。 まったく手がつ かないので、お嫁さんは、泣いている。 おっ母さんに手紙で相談しても、辛 抱だよ、と言ってくる。 嫌だけれど、先のおかみさんの着物に手を通してみ ても、手がつかぬ。 色っぽい、いい女がさめざめと泣いているのだから、こ れはたまらない。 インフォメーションはこれです。 お時、こっちへおいで、 悪かったね、こっちへおいで。 あなた! 胸に飛び込む。 昔、ゴールデン・ レトリーバーを飼っていた。 ケチャップという名前、おやつに「待て!」をさ せて、何かあって慌ただしく寄席に出掛けた。 6時間経って、帰ると、ケチ ャップがよだれをダラダラ垂らして待っていた。 「よし!」 ワッワッワッ と食べた。 旦那がケチャップ。 お嫁さんがケチャップ。 ワッワッワッ、 落語研究会で何をやっているんだろう。 ご懐妊となって、玉のような男の子 が生まれた。

 三年目、先妻の法事に、親子三人で墓参り。 安心しておくれ、お前の法事 も、お時がよくやってくれた、私は今、幸せだ。 墓石がガタガタした。 そ の真夜中、八ツの鐘がボーーン、ゾクゾクっとした。 お花かい、消えとくれ。  明日、離れで待っているから。 あなたは、心変わりをなさいました、うらめ しゅうございます、赤さんまでこしらえて…。 約束を破ったのは、お前の方 だろう。 ご無理を言ってはいけません、棺桶に入れる時、ご親戚の方々がよ ってたかって、私を坊さんにしたでしょう。 あなたまで…。 毛が伸びるま で、三年待っておりました。

 かなり色っぽい圓太郎の「三年目」、とてもよい出来だった。 圓太郎は好き だったが、相当のものになってきたような気がする。