国の貸借対照表と、特別会計の巨大な闇2014/11/12 06:36

Tさんの所論は、ちょっと難しい所もあるので、私なりに付け焼刃の勉強を しながら、読んでみた。 Tさんも触れている「国の貸借対照表」だが、田中 秀明著『日本の財政』(中公新書・2013年8月)には、こうある。 「法的な 制度として位置付けられている決算とは別に、近年、財務省は「国の財務書類」 を作成している。国の財務書類は、資産や負債などのストックの状況や費用や 財源などのフローの状況を、企業会計に準じた発生主義に基づき作成するもの であり、2003年度決算から公表されている。ただし、その発表は遅く、2011 年度の財務書類は、13年1月29日に公表されている。従来は会計年度終了後 2年を要していた。アメリカなどと異なり、国の財務書類は、会計検査院によ る監査を受けておらず、計数の信頼性に問題がある。」

一般会計と特別会計の問題。 新聞やテレビで、「予算」として報道されるの は、「一般会計」である。 可部哲生編著『図説 日本の財政 平成26年度版』 (東洋経済新報社・2014年9月)によると平成26年度の「一般会計」は、95 兆8千億円。 これに対し、「特別会計」は、411兆4千億円もあるが、重複分 があるので、それを差し引くと、141兆6千億円になる。 「一般会計」と「特 別会計」の純計は、237兆4千億円である。 Tさんの家計の例でいえば、100 万円の給料の内、亭主が「特別会計」にするのは、50万円でなく、60万円に もなる勘定だ。

「特別会計」の財源は、使途を限定したガソリン税、石油税、地方道路税や、 健康保険、国民年金保険、労災保険、雇用保険などの保険料、事業収入のほか、 一般会計からの繰入金で賄っている。 「特別会計」は、平成26年度は15あ り、事業の実施、資金の運用、国債償還などの機能を持つ。 各省庁が個別に 管理しているため、縦割り行政の温床になっている。 一般会計・特別会計間、 特別会計相互間の歳入歳出は重複経理され、実態はつかみにくい。

上に引いた『日本の財政』は、一般会計当初予算の財政赤字が過小見積りと なっている原因の一つとして「一般会計・特別会計間の資金操作」を挙げてい る。 「たとえば、一般会計が負担すべき歳出1兆円を特別会計の借金として 負担させるとした場合、他の条件が一定であれば、一般会計の財政収支は1兆 円改善し、特別会計のそれは1兆円悪化する。しかし、わが国の予算資料では、 一般会計及び特別会計を連結した財政収支が発表されていない。」「1994(平成 6)年度に最高額として4兆円を超えたときがあるが、1988(昭和63)年度以 降、変動はあるものの、1兆から2兆円が一般会計に繰り入れられている。」