官と民、「慶應義塾の最大の役割」2014/11/17 06:43

 「等々力短信」第1064号「「明治14年の政変」の共同研究を」に対して、 やはり同期で、SFC湘南藤沢キャンパスを支援しているMさんからも、コメ ントをもらった。 その要旨は、以下のようなものだった。

 明治14年の政変によって、中央集権的な、官に頼る、近代日本の体制が出 来上がっていった。 以来変わっていない官支配の体制を崩して、官から民へ の流れを作ることが慶應義塾の最大の役割である。 SFCではこの気概を持つ 教員も多く見受ける。 「国を頼らず国を支える」気概が福澤精神の真髄であ ると思う。

日本は未だ、「成熟した民主主義の社会」にはなっていない。 成熟した民主 主義社会は、倫理、責任も全て自分で負う、自立した個人が協力して公共の自 律を担う社会であり、個人が、地方分権や個人責任に耐えられる人間にならな いと実現は難しい。 しかし、いまだ官が強く、個人の意識も足りない。 慶 應義塾の最大の役割は、明治14年以来変わることのない官支配の体制を崩し て、官から民への流れを作り、「成熟した民主主義の社会」を作り上げることで あり、今やその時代が来ている。

 慶應義塾は、1989年のベルリンの壁崩壊(今年は25周年)を受け、実質的 に東西冷戦が終結した1990年にSFCを設立し、時代のパイオニアになるべき、 問題発見解決型の人材、起業家の育成を図ってきた。

このMさんのコメントは、15日に日記で見た飯田鼎先生の明治14年の政変 によって「教育もドイツ流」の、東大を中心とする官学が中心となり、英米系 の社会科学研究の盛んな福沢の慶應義塾や、大隈重信が明治15年に創立した 東京専門学校(早稲田大学の前身)の卒業生は、官僚の世界から排除された話 につながる。

 私はMさんへの返信にこう書いた。 「明治14年の政変で「中央集権的な、 官に頼る、近代日本の体制」が確立したわけで、官尊民卑は福沢さんの攻撃し てやまないところでした。 私は(独立自尊の)福沢さんなら、私学への補助 金を辞退するだろう、と思っています。 慶應が辞退すると、他の学校が困る という、各界で叙勲辞退ができない理由と同じことを言う人がいますが…。」と。