春雨や雷太の「古着買い」2015/01/23 07:00

 大寒の20日は、第559回落語研究会だった。 初席だが20日ともなると、 正月気分ではない。 噺家も正月の挨拶はしないが皆、今日、お正月興行の「二 之席」の千秋楽だったことに触れる。

「古着買い」        春雨や 雷太

「星野屋」         春風亭 一之輔

「盃の殿様」        柳家 喜多八

          仲入

「居酒屋」         古今亭 志ん橋

「藪入り」         橘家 圓太郎

 春雨や雷太、落語芸術協会所属、2006年に春雨や雷蔵に入門したというけれ ど、その雷蔵も知らない。 大師匠は雷門助六だそうだ。 落語研究会に出る のを、贔屓は「すごいね」「よかったね」と言ってくれるが、「もっとがんばる と笑点に出られるよ」と。 実家の近くで会を開いているが、「寄席で聴きたい」 と言われる、それはご存知のように大変難しい。 「お客様は神様」というの は、神様に聞いて頂くつもりで、歌や噺を演ることだそうで…。

 与太郎の甚兵衛(雷太が与太郎の声を出すと、逸ノ城の顔になる)が、熊さ んに頼みに来る。 家の前を若い男が行ったり来たりしていると、ウチのおか みさんが出て行って、ヒソヒソ話をしているので、薪ざっぽを持って行って、 叩こうとしたら、おかみさんの弟だった。 自分のかみさんに、「お」をつける な、弟を知らないのか。 二、三度会ったことがあったが、顔を忘れてた。 弟 は親父さんの金を使い込んで、家を追ん出され、叔父さんの家に行ったが断ら れ、ウチにいることになった。 汚い着物を着ているので、木綿の綿入れでも 買ってやろうと思う。 かみさんが、熊さんは、こすっからいから買物が上手 だ、おだてればおっちょこちょいだから、一緒に買い物に行ってくれると言っ た。 そう、面と向かって言うな、と言われた。 もう、言っちゃったじゃな いか、だけど、そういう親切な所が好きだ、八丁堀あたりへ行こう。

 熊さんは、木綿の綿入れを買うのだが、小紋の紋付きに、柄や色合い、紋が ちがうなど、口で傷つける、たとえ話をする。 甚兵衛には、たとえ話だとい うのがわからない。 でも、俺、たいがい察する、紋はタンポポに似た、菊の ご紋だ、と。

 古着屋、木綿の二子縞の総裏を出し、新しい更綿で、丈夫な河内木綿だと言 う。 甚兵衛は、足下を見られないようにと、しゃがんでいる。 朝商いだか ら、勉強します、とソロバンで値を示す。 甚兵衛がガチャガチャやって、出 したのは8960万。 馬鹿、カバ!  3円50銭でいかがで。 もっと安くし て。 決着のところは、いくらで。 3銭にして下さい。 冗談じゃない、お 引き取り下さい、ドロボウ物を商っているんじゃない、ドロボウ物だって人件 費がかかっている。 頭ん中スカスカだな、硫酸で顔洗って出直せ、お帰えん なさい。

 熊さん、尻まくって、啖呵を切る。 お前は主人か、番頭か、人見て物を言 え、俺達は江戸っ子だぞ、硫酸で顔洗えだと、キンカクシじゃねえ。 (甚兵 衛にも)どつくんだ! やーい、古着屋さん。 さん、はいらねえ。 俺達は、 千葉県民だ。 俺は頭ん中スカスカだが、ここにいる熊さんは、エレエんだぞ、 刑務所まで行った。 古着買いの、馬鹿馬鹿しいお笑いで…。

 聴かせどころの啖呵と、甚兵衛の与太郎ぶりの落差の面白さを、うまく書け なかった点はあるが、春雨や雷太、まだまだという出来だった。