金原亭馬玉、真打昇進襲名披露口上2015/03/30 06:36

 この春3月、柳亭市馬会長の落語協会で、10人が真打に昇進した。 その中 の一人、金原亭馬吉改メ馬玉(ばぎょく)の真打昇進襲名披露興行を27日夜 席の鈴本演芸場で観て来た。 馬玉、実は大学の同期生の娘婿だというので、 今年の仲間内の新年会でしゃべってもらった。 その縁で、8日に上野精養軒 であった真打昇進襲名披露パーティーにも呼ばれた。 長く落語を聴いてきた が、真打昇進のパーティーは初めての経験だった。

 さて、鈴本の披露口上である。 仲入後の午後7時30分、幕が上がらぬう ちに、アナウンスがあった。 女性トイレに、入れ歯の忘れ物がございました、 林家正蔵がお預かりしております。

 幕が上がると、平伏しているのは、上手から柳亭市馬、柳家さん喬、師匠の 金原亭馬生、本人・金原亭馬玉、鈴々舎馬風、柳家権太楼、林家正蔵の七人。  正蔵、若輩者ではありますが司会を務めます、前々回の落語協会会長(馬風)、 ふつうならもう額の中に入っているはずなのに、動いている、落語界がいかに 長寿社会かわかる、と始めた。

 まず落語協会幹事・権太楼の口上。 真打双六には、一回休みや振り出しに 戻るはあるが、上りがない、賽の目を振り続けなければならない。 で、若い 者は切っ先が鈍るので、お客様のご祝儀、大きな拍手、待ってましたの声が必 要だ。 常任理事・さん喬の口上、馬玉は稽古熱心で礼儀正しい、師匠と違っ て…(隣の馬生が小突く)、がんばれ、がんばれと、声をかけて頂いて、一枚看 板になれますよう…。 落語協会最高顧問・鈴々舎馬風の口上、春爛漫、美酒 爛漫、本日プロ野球の公式戦も開幕して、5回まで巨人は亀井のホームランで 3点、横浜は筒香のソロで1点、今年こそ読売ジャイアンツが日本一になれま すよう…(で、頭を下げる)。 (権太楼につつかれて)ついでに、馬玉もよろ しく。 正蔵、三平さんの小咄をやれ!

 (権太楼が、正蔵の前にマイクを動かす)おかあちゃん、パンツが破けた。  またかい。 (「もう一つ」の声)中国の人が、骨折したよ。 ペキン! (「ア ンコール!」)鵞鳥が商売を始めたよ。 ガチョリンスタンド。

 権太楼師匠も、お手本の小咄を(の声)。 馬吉が出世して、馬玉になったね。  玉座をとったんだから、点(天)という字をとって、王になろうとしています。  さん喬師も、どうぞ。 帰えろかな(と、さん喬)、美術館でゴッホ、ユトリロ、 ダ・ヴィンチの絵を見た奥様、「これはピカソね」「奥様、それは鏡です」。 馬 吉が金星になれますよう、隅から隅まで、ずずいっと…。

 落語協会会長・市馬の口上。 満を持しての昇進、行儀のよろしい、芸の伸 びもある馬玉が、噺家の中の噺家になれますよう。 (馬風の、市馬には特技 があるの声に)相撲甚句、口上だか大喜利だかわからなくなるが、と。 ♪弥 生三月、花見頃、ここは鈴本演芸場、見事に開く芸の花、お集りなる皆様よ、 変らぬご贔屓、アー、アー、願います。 オー、ドスコイ。 オー、ドスコイ。

 師匠、馬生の口上。 先輩の皆様にお褒めの口上を頂いて、馬玉は幸せ者で ございます。 これ馬玉、あとで四、五十万配るように、その時は、私を通し て…。 馬生一門は皆、いい男と言われますが、いい男しか弟子にしない。 落 語家は一節二声というけれど…。 馬玉は年増にもてる、七十、八十の、だか ら着物をどっさり作ってもらって。 男性からも、もてる。 名古屋の社長で、 馬吉が二十歳そこそこの頃、ホテルへ連れて行かれ、慌てて逃げ帰った。 私 は、叱りました、身体の一つや二つ…。 この者は、気性がよい、伸びる素質 がある、ですが、お客様のご贔屓で、この馬玉(と、言おうとして、「玉」のと ころで噛む)。 (さん喬が、)馬玉、俺ン所へ来い! 末には、一枚看板にな りますよう、ひとえに御願い申し上げます。

 舞台と観客、全員で三本締め。 ヨイヨイヨイ、ヨイヨイヨイ、ヨイヨイヨ イ、ヨイ。 7時57分になっていた。