原田達夫さんの句集『箱火鉢』2015/09/01 06:31

 原田達夫さんが句集『箱火鉢』を上梓され、ご恵贈いただいた。 原田さん は、『鴫』の同人、俳人協会会員。 実は、パソコン通信の頃から朝日ネットの 私のフォーラムでやっている句会に参加して下さっている。 お母さまも、そ の句会に90歳を越して投句して下さっていた時期があって、一度お会いした ことがあった。 『箱火鉢』では、その晩年が詠まれ、「母逝く」四句があるの が、とりわけ感慨深いものがあった。

 『箱火鉢』には、平成17年から今年までの句が収められている。 私の気 に入った句を挙げておく。 生と死を、素直に受け入れていらっしゃる。 そ こはかとない上品なユーモアも、とてもよい。

花を見てゐることは生きてゐること

くちぼその死は睡蓮の葉の上に

太刀魚をひかり引き抜くやうにかな

春の日の老人と鯉知己なりし

何を言うても笑む母の花の昼

勝鬨橋がつがつと揺れ冬に入る

粥柱口まではこぶ母白寿

蘭鑄の顔のつくづく知足たり

凛として母新月に旅立ちぬ

蛇穴を出づまづまづ存す日本国

下総の山並みやさし桐の花

銀漢に列なる漁りありにけり

悪尉になるやもしれず八十の春