圓太郎の「祇園会」2015/09/07 06:31

 国立小劇場の落語研究会、緊張する場所だという。 古くから聴いている、 ご通家ばかりで、つらいところがある。 何しろ国立ですからね、消費税払っ てよかったと思うのは、ここぐらい。 いつもと違う。 小さんが小三治の頃 から見ています、なんていう人がいる、ハハァーーッ。 寄席で、マクラをや っただけで、たぶん「子ほめ」だ、などという。 ここには半蔵門線で、ちゃ んと来る。 洋服に、カバンで、オーラを消しながら…。 それでも気づく人 がいて、アッ。 頭を下げると、心が一つになる瞬間がある。 なろうことな ら、名前で呼んで欲しい。 ブログというのに、「つまらない噺で、一日つぶれ た」なんて、ひとりよがりを書く人がいる。 こっちは苦労して、ここに座っ ているんです。 地球が誕生して46億年、人間が出来上がったのが1万年前、 ほんのわずかでしかない。 江戸っ子は、父方三代、母方三代なんていう。 イ ンターネットで、いろいろ調べる人がいるけれど、インターネットも適当にし てもらいたい。 小里ん師匠は浅草の出、48(昭和23)年生れなんて。 昔は、 夢があった。 高座に上がっている噺家は、江戸っ子でありたい。 落語協会 の市馬会長は、大分県出身。 三回引っ越ししたら、江戸っ子という、大英断 を下した。

 江戸っ子、三人でお伊勢参り。 しゃんしゃん歩け、ご先祖様の助六に申し 訳ない。 腹へった、足痛い。 ご先祖様の幡隨院長兵衛に申し訳ない。 粟 田口だ、祇園は目と鼻の先、湯に入ってさっぱりして繰り込もう。 畑のおば さんに湯を聞こう、おかみさん。 なんでおす。 押しやしません。 何どす の。 殺気立ってる、ドスだ、ドスだ。 湯はどこで? ゆーたら、どないも んだす。 そら、風呂屋どす。 所変れば、品の名が変る。 どんつきを、お 上がり、行かはったら、わかる。 三条大橋をお渡りになって、お上がり、ど んつきを、お下がり…。

 男三人、長旅の果て、図書館には行かない。 女郎買い、おやま買い、京の 女は当たりがやわらかい。 かんにんどすえ。 ぽこちん、路銀がすっかりな くなって、二人は江戸に帰り、六条に伯父さんのいる一人だけが残る。

 夏本番、祇園祭、料亭梅村屋の二階、伯父さんが野暮用で、一人酒を飲む。 一杯いきまひょ、江戸のお兄ィさん。 盛り上がる酒、けっこうなもんで。 あ たりまえの酒だ、伏見の水は日本一、王城の地や、ははははは。 チーーーン、 祇園囃子は落ち着きます、ははははは、日本一や。 陰気だな、江戸は陽気だ。 ゴミゴミしていて、人間、落ち着きがない、チョコチヨコしていて、軒下にお 犬さんがウンコたれてる、武蔵国の江戸じゃなくて、むさい国の反吐だ。 何 を! お兄ィさん、怒ったな。 怒ってねえ。 京は日本一、王城の地や、あ ずまえびす(東夷)の田舎者とは違う。 ガッ、ガッ! 日本一は富士のお山 だ、京は寺しかない。 江戸っ子は気が短い、京の人間は、朝から晩まで、菜 っ葉喰ってる。 風、くらって、屁こいとれ。

 祇園さんの祭、見ておくれ。 薙刀鉾、上品なお囃子や、「コンコン、コンチ キ、コンチキチン、ヒューリヒューリ、トッピッピーーッ」。 そんな陰気な祭 がどこにある。 将軍様のショウデン(昇殿)、神田の祭だ、「オヒリヒャリト ー、オヒャリトロ、トンガラカッタ、ピィーーッ。テンテン、テレツク、テン ツクテンツク、スケドンドン、ヤ、ドッコイ」とくらあ。 お神輿がいい。 山 鉾は、お稚児も引いて回る。 ソーリャーーッって、いっても、ちっとも前へ 進まないじゃないか。 ワッショイ、ワッショイ、景気がいい。 アリャリャ、 御所見物はしましたか、紫宸殿のお砂を握ると瘧(おこり)が落ちる。 べら 坊め、江戸大手の砂利をつかむと、首が落ちらァ。