志の八の「花色木綿」2015/10/01 06:33

 9月28日は、第567回の落語研究会だった。

「花色木綿」        立川 志の八

「粗忽の使者」 喬之進改メ 柳家 小傳次

   「猫の災難」        柳家 権太楼

         仲入

「二階ぞめき」       柳家 花緑

「お神酒徳利」       柳亭 市馬

 立川志の八、1974年生れ41歳、2000年に志の輔に入門、晴の輔(志の吉改 メ)につぐ二番弟子、2009年二ッ目。 出囃子は「エイトマン」だというが、 私は「エイトマン」を知らなかった。 落語研究会は、憧れ、ステイタス、だ と言う。 自分では、場違いだと思う、新宿末廣亭と同じ感覚。

 慣れないことは、やらない方がいい。 泥棒も、合っている人がやった方が いい、と「花色木綿」に入る。 使い物にならない新米、空き巣からやれ、と 親分。 捕まったときの、逃げ口上を教わる。 泣いて、八つを頭に三人の子 供、八十になるおっ母ァがいて、なんとか食わせなきゃあならないので、と言 うんだ。 敬礼して、出かける。 隣の家から、声をかけて、馬鹿、遠くへ行 ってやるんだ、と怒られる。

 貧乏長屋に入る。 何もない、フンドシが一本、下がっている。 まず、こ れをいただいて、と。 土鍋におじやがある。 駄目だ、駄目だ、と言いなが ら、そのおじやをすする。 誰かが、湯から帰って来る。 裏は石垣、行き止 まりだ、台所の床下に隠れる。

 帰ってきた男、フンドシがない、おじやが食われている、泥棒が入ったんだ、 と気づく。 これはいいぞ、おーーやさん、てぇへんだ、泥棒が入った。 お 前のところ、何もないじゃないか。 店賃を五つ、持ってかれた。 待ってや ってもいい、ほかに何を盗られた。 届けるのに、書いてやろう、矢立と紙が ある。 届ける? 返ってくるかもしれない。 泥棒さんは、どういうものを 持ってくんですか? 何を盗られたんだ。 越中フンドシ一本。 布団。 ど んな布団だ、表は? にぎやか。 布団の表だ。 大家さんのとこは? 唐草 だ。 ウチも唐草。 裏は? 石垣、行き止まり。 布団の裏だ。 大家さん のとこは? 花色木綿。 ウチも花色木綿。 柔らかものは? おじや。 絹 だ。 羽二重の紋付。 羽二重の紋付なんて、どこにあった? 奥に、しまっ てあった。 紋はいくつ? 六つ。 六ところ紋なんて、あるのか? お尻に も一つ、肛門、落語研究会だぞ、お前。 裏は、何だ? 花色木綿。 夏物は?  蚊帳が一枚。 蚊帳は、一張りと言う。 寸法は?……まあ、五六だろう。 裏 は、花色木綿。 蚊帳に裏があるか。 刀、先祖伝来の刀。 お前に先祖なん て、いないだろう。 いるんです。 大刀か、小刀か、短刀か? 適当。 銘 はあるか? 姪はいない、甥が二人。 無銘か、無銘の刀、一振り、と。 裏 は、花色木綿。 刀に裏があるか。 それから札だ、札だ、裏が花色木綿。

 アッハッハ、アッハッハ! 変な声で、笑うな。 アッハッハ、アッハッハ、 札の裏だって……、可笑しくって、腹が痛くて、こんな所に入っちゃあいられ ねえ。 台所から出て来たぞ。 お前が泥棒か。 アッハッハ、確かに入りま したよ、何もない、ない、ない、あったのは越中フンドシ一本、おじや少々。  返せ、フンドシ。 返すよ、おじやは、もう少しすると出てくる。 しょっぴ くぞ。 心外だ。 そうだ親分が言っていた、ハーハー、泣くんだ。 八つを 頭に母親が三人、八十になる子供がいて、なんとか食わせなきゃあならない。

 まさか裏が石垣だとは、思わなかった。 じゃあ、何だと思ったんだ。 も ちろん、花色木綿。

柳家小傳次の「粗忽の使者」2015/10/02 06:36

 喬之進改メ柳家小傳次、さん喬の弟子、3月に真打になり改名した。 袴姿 で出て、落語研究会は三度目の正直、喬之進で前二回撃沈した、笑わせたい、 と。 「きゃりーぱみゅぱみゅ」、正式には「きゃろらいんちゃろんぷろっぷき ゃりーぱみゅぱみゅ」は、噛まずに言える。 その感じで、ゆっくり、落ち着 いてやればいい。 「まめで、そそっかしい」のと、「不精で、そそっかしい」 のとがある。 「まめで、そそっかしい」のは、言葉が出ない。 湯へ行くの に、湯という言葉が出ない、ようやく湯が出て、湯へ行くから鉄瓶出してくれ、 鉄瓶じゃなくて手拭、それから踏み台……、踏み台じゃなくて風呂代。 「不 精で、そそっかしい」のは、黙って、鉄瓶下げて、湯へ行く。

 杉平柾目正(まさめのしょう)という大名が、家来で粗忽者の治部田治部右 衛門を、親類の赤井御門守と謀って、戯れの使者につかわす。 治部右衛門は、 出かけるのに、「べんとー」「べんとー」と、別当を探し、豚を引け、牛を引け、 いや馬だ。 怪しのものだ、首がないぞ。 向きが……、どうぞ、お乗り換え を。 わしが跳び上がっている内に、馬の向きを変えろ。 そうは参りません、 どうかお乗り換えを。

 大工職人は少し離れるようにと、お使者触れがある。 何、笑ってんだ。 ヒ シャが来るってんで、キョウスでも来るのかと覗いていたら、裃が曲がってい る、変なお使者が来た。 田中様が「拙者は当家の家臣田中三太夫」と名乗る と、そいつも「拙者は当家の家臣田中三太夫」と言いかけて「では、ござらん」 と言うんだ。 お使者のご口上を、と聞かれて、真っ青になった。 脂汗を流 して、ご口上を忘れた、と言う。 ご冗談を、一個所でも、憶えているところ は? 一個所も憶えているところは、ござらん、お詫びに満腹じゃなくて、切 腹しなければ…。 幼少の頃から、ケツをひねられると、忘れたことを思い出 す、ご貴殿、ひねって下さらんか。 俺は、侍のケツを初めて見たよ。 田中 様が、ひねった。 もはや、おひねりで……、もそっと力を入れて。 それで も、思い出さない。 「指先に力量のある御仁」を。 大藩のことだ、力士を 雇ってでも、ということになった。 それで、俺が行ってくる。 田中様は柔 の先生、三人力だぞ、その田中様がだめだったのに、お前にできるのか。 釘 抜き、エンマ(昔はペンチの形、閻魔様は嘘つきの舌を抜いた)でやる。 ま かり間違えれば、腹を切るってんだ、何とかしたい。 親父にガリ食わねえよ うに、うまくやっといてくれ。

 まっぴら、ごめんねえ。 ぴらぴら、言っている奴がおる。 田中三太夫さ んにお目にかかりたい。 職人が何だ、作事場へ回れ。 先ほどのを見てまし て、あっしが行ってひねってみましょうか。 丸太に打った五寸釘でも引き抜 く。 火急のことゆえ、当家の若侍ということにするか、紋服に、帯は神田結 び、後ろ前を穿いた袴、窮屈袋を穿き直す。 言葉は丁寧に、頭に「お」の字、 しまいに「たてまつる」をつけるように。 「おったてまつる」か。 名は何 と申す? トメッコ。 田中を裏返して中田、名は留太夫、中田留太夫としよ う。 田中三太夫に中田留太夫、三河万歳みたいだな。

 中田留太夫殿、これへ。 (呼ばれてもわからず、やむなく三太夫)トメッ コ。 おこんちはで、おったてまつるでござる。 (三太夫に席を外させ)お い、おじさん、間抜けな野郎だ、俺は出入りの職人で「指先に力量のある御仁」 だ、ケツ出しな、ひねってやるから。 よろしくお願いいたします。 汚たね えケツだな、毛むくじゃらで。 いくぞ、どうだ! あっ、冷たいだけで、も う少々手荒く。 固えケツだな、どうだ!コレで!  アアッ、えけえ力量で、 痛さ耐えがたし、思い出してござる。 して、ご使者の口上は? 屋敷を出る 折、口上を聞かずに参りました。

権太楼「猫の災難」のマクラ「出囃子」2015/10/03 06:32

 権太楼の出囃子は陽気だ。 ♪金毘羅船々 追手に帆かけて シュラシュシ ュシュ まわれば四国は 讃州 那珂の郡 象頭山 金毘羅大権現!

 権太楼は、そろそろ、この出囃子をやめようかと思っている、と言う。 噺 家が亡くなると、出棺の時、出囃子が流れる。 五代目小さんが亡くなったと きは「序の舞」、志ん朝の時は「老松」、先だっての扇橋師の時も左様「俄獅子」、 ツンツンテンテン……。 弟子たちが、棺を担いで出て来る。 目白! 五代 目! と、声が掛かる。 その間が、いいのよ。 それの時に、♪金毘羅船々  追手に帆かけて シュラシュシュシュ。

 私は、まだまだ、いい。 友達で、大学が同期の三遊亭右門、彼は私と別の 方がいいと落語芸術協会へ行ったんだが、一昨年かな亡くなった、65歳。 脂 の乗ってきた時期で、未亡人の梅子さんが、せめてあと一年、落語やりたかっ たと、言っていた、と。 落語芸術協会でも重要な役で、無念、厳粛な葬儀が 営まれた。 出棺となって、出囃子が流れる。 野球拳。 ♪チャンチャカチ ャン、野ァー球ュウ、すーるなら…。 私も、そろそろ出囃子をやめようかと …。

 小三治さんなんか、いいんですよ。 死んでませんが。 元気ですよ。 「二 上がり羯鼓(かっこ)」。 ♪デンデン…。 出囃子が流れても、なかなか出て こない、みんなが待っているのに。 小三治さんだから…。 高田馬場! な かなか霊柩車まで行かない。 マクラが、長い。 ウォン、ウォン、とクラク ションが鳴って、すぐ焼場へ行っちゃう。 本題が、小言念仏、だったりして …。 お元気よ。

 大きなお月さま、見ましたか(9月28日、スーパームーンだった)。 倍く らい、大きい。 9時までは、いてねって言っておきましたから、お帰りにぜ ひ見て下さい。

権太楼「猫の災難」の本篇2015/10/04 06:52

 お酒は飲みたい時が身上、飲みてえな、あいにく一文無しだ、仕事休まなき ゃあよかった。 熊さん、戻ってたのかい、ウチの猫が病気になってね、見舞 いにもらった鯛、身だけ食べさせて、頭と尻尾を捨てようと思って。 いただ きますよ、おかみさん、猫がお見舞いでもらったんですか。 大きいテエだ、 擂鉢をかぶせたら、頭とシッポが飛び出ちゃった。

 兄貴じゃないか。 ここで二人でみっちり飲もうと思って来た。 やかんの タコだ、手も足も出ねえ。 肴がない。 よせよ、デェドコロにでけえテエが あるじゃないか、あれを三枚に下ろして、片身を塩焼に、あとは刺身にすれば いい。 俺が酒買うから、五合あればいいだろう。 前の酒屋で、お前の名前 を出す。 名前を出せば、勘定だけ取って、酒はくんない。 隣町の酒屋もダ メだ、橋を渡って、三丁ばかり行った所の酒屋は、いい酒だがハカリが悪い、 五合買うと五合しかこねえ、一合買うのに一升瓶を持ってく、少し余計に入らないかと思って…。 鯛をつくっといてくれ、ウロコを引くのは難しいぞ。 ち ゃんとやっとくから。

 どうしよう、実は隣の猫が……ってことにするか、悪いよね、猫にもらった のに。 追っかけたんだが、四本足に二本足だ、逃げられた、と。  酒、買ってきたぞ、ちょっとやったら、いい酒だった。 お前に、すまねえ ことしちゃった。 台所でガタガタっていったんだよ。 隣の猫が、三枚に下 ろしたテエをくわえて行った。 隣に文句を言え。 独り者だろ、隣のおかみ さんにはいろいろ世話になっているんで、言えねえよ。 あと片身があるだろ う。 猫が片身は手で肩に背負って、片身は小脇にはさんでよ。 肴なしで、 二人で飲もう。 いいよ、俺買って来るよ。 すまないね。 すまないよ。

 あいつ、向こうでやったって言ってたから、飲んで待っててやろうかな。 一 杯だけね。 アーーッ、いい色だ。 ウッ、ウッ、ア、ア、いい酒だ、こんな いい酒、あの店で売ってたのか。 アッ、ウーー、飲みてえ、飲みてえって、 思っていたから、ノドが開くね。 口当たりがいいから、どんどん入るね。 ア ア、今日は休んでよかった。 アーーッ、落ち着いた。 アッ、アーーッ、も う半分だけ、頂戴します。 アッ、いっぱい入っちゃった。 口の方から、お 迎えだ。 朝酒は、カカアを質に置いてでも、ってね。 あいつは、肴がない と飲めないってんだ。 あ、わかった、あいつの分を、取っといてやれば、い いんだ。 燗徳利の、口から口へ、口移し。 ゆっくり、トットット、入れと いてやろう。 アッ、あふれる! こんないい酒、畳に飲ませることはない。  (口をつけて吸ったり、手につけて、顔や頭に塗ったりする)。 徳利の口がい っぱいになっちゃって、これじゃあ燗もつけられねえ、戻そうか、どうしよう。  吸っちゃおう。 ズ、ズ、ズ、ズ、ズッ。 みんな飲んじゃった。 何で、こ んなに少ねえんだ。 どうする、一合に、四合の水割っちゃったら、わかるよ ね。 実は、隣の猫が。 猫は、酒飲まないか。 こんだけ余ってても、しょ うがねえ、度胸を決めよう。(と、全部飲む)

 ♪夜桜や浮かれ鴉がまいまいと…。(?) 浮かれちゃあ、いられないんだ、 猫を追うような恰好、鉢巻して、片肌脱いで、出刃右手に持って、止めねえで くれ、あの猫、たたっ殺さないと、気がすまねえ、と。

 四軒も渡り歩いて、やっと同じようなテエを買ってきた。 寝てるよ、熊。  熊! 熊! 熊! もう一幕あったんだ、猫が来て、先ほどはご馳走様、まだ 眼肉が残っているはずだって。 鉢巻して、出刃持って、追っかけた。 あー ーあ(と、アクビ)。 猫が徳利をひっくり返した。 全部は出なかった、あり がてえことにね。 酔ってるな、お前、みんな飲んじゃったのか。 飲んだん じゃない、吸ったんだ。 吸ったほうが、酔うね。

 何だい、熊さん、猫が、猫がって、冗談じゃないよ、ウチの猫のお余り、あ げたんじゃないか。 何、猫のお余りを、もらったのか。  次は、俺に何させようってんだ。 隣に行って、猫に詫びてくれ。

花緑の「二階ぞめき」2015/10/05 06:32

 容子の違う柳家花緑が、出て来た。 七三に分けた長髪でなく、短かく刈り 込んでいる。 髪形を変えたのは、先々月、加東大介さん原作で、その体験に もとづいた『南の島に雪が降る』という芝居を演っていたからだという。 六 月、この髪形にしたら、芸も良くなった、と言われた。 「素見(ひやかし) 千人、客百人、間夫が十人、色一人」。 よく「若旦那」と言われるけれど、ほ かの「若旦那」と一緒にされたくない。 木久蔵君、三平君…。 気持は、群 を抜いた真の「若旦那」、22歳の時に最年少で真打になって以来の…、時の落 語協会会長との太いパイプがあってのことだけれど…。 花緑、明るい黄土色 の羽織を脱ぐと、グレイの着物も紋付だった。 「素見(ひやかし)千人、客 百人、間夫が十人、色一人」。

 番頭が、若旦那に、どうして夜になると、出かけるんです、と聞く。 毎晩 でなく、三日に一度とかにしたらどうですか、どうして毎晩なんですか。 ど うして? そこに吉原があるからだ。 女ですか。 女は、どうでもいい、吉原 の空気、雰囲気がいいんだ。 素見(ひやかし)ですか。 毎晩通っていると、 人と人だ、情が移る。 行かないと、みんなで心配してくれる。 顔を見せな いから、余所へ行ってるんじゃないかと思ったわよと、つねられる瞬間がたま らない。 女を身請けをして、どこかに囲うようにしたら、行きませんか。 吉 原を身請けしてくれたら、行かない。 じゃあ、家に吉原をつくりましょう。  家に吉原…、お袋と婆さん、侍らせてか。 いいえ、二階が広いから、棟梁に 話して、吉原の通りをつくってもらいます。

 出来ました、灯りが入ったところです。 吉原は遠いから、歩いて行かなき ゃあならない、それが店にあるというのはいいな。 どうぞ、遊んでいらして 下さい。 風呂敷包みを持って来てくれ。 素見の着物に、着替えて行こう。  うちの二階なんだから、着物なんていいでしょう。 そうじゃないんだ、やっ ぱりナリをしなきゃあ。 古渡り唐桟てんで、平袖(ひらそで)、広袖ともいう、 袖口の下の方を縫い合わせないで、全体が開いた袖、喧嘩になった時、すぐ手 が出る。 手拭でほっかぶり、夜霧が毒だから。 一人で、階段を上がって行 く。 くたびれたら、道に行倒れになっても大丈夫だ、畳だからな。

 棟梁の腕の見せ所だ。 オッ、よく出来たね、大見世かい。 格子、籬……、 女や妓夫太がいる。 ♪オウーイ……、誰もいないね、寂しい吉原だね。 大 引け、ちょいと過ぎか。 犬の遠吠え、そば屋、按摩の笛。 ヒューーッ、江 戸の空っ風だ。 ♪交わす枕が、交わす枕が、おしゃべりながら……。 どう ぞ、お登楼(あ)がりを。 袖を、つかむな。 何から何まで、俺一人、忙し い。 ♪日々に喧嘩が絶えやせぬ。 ちょいと、一服お上がんなさいな。 一 服やっとくれ、お前さん、今晩登楼ってくれないかしら、拝んじゃおう。 俺、 素見なんだ。 登楼んないの。 どこへ行こうと、俺の勝手だ。 登楼りもし ないで、煙草ばかりのんで、この泥棒、銭無し野郎。 何を! よせ、よせ、 やめろ。 ちゅうせえ(仲裁)だ。 バン、バン、バン(叩き合いの、大喧嘩 になる)。

 何だ、この二階の騒ぎは? 定吉、静かにしろって、バカに言って来い。 バ カに、言ってきます。 ありゃあ、ずいぶんきれいになっちゃったな。 若旦 那、一人で喧嘩しているよ。 何だ、この野郎、こんちくしょう、バン、バン。  やりたい放題だな、若旦那、若旦那っ。 何だ、定吉か、えらい所であったな。  うちへ帰っても、俺とここで会ったことは、黙っててくんねえ。

 花緑、肩肘張らず、楽しそうに、テンポよく「二階ぞめき」を演じて、今ま でで一番よかった。 髪形の影響も多少あったが、「若旦那」を地で行ったから だろう。