『折口信夫芸能史講義 戦後篇』(上) ― 2015/11/10 06:22
岡野弘彦さんの話が長くなって、『池田彌三郎ノート 折口信夫芸能史講義 戦 後篇』(上)(慶應義塾大学出版会)の紹介をした伊藤好英さん(元慶應義塾高 校教諭)の時間が少なくなったのは気の毒だった。 伊藤さんはこの本を、講 演会を主催している藤原茂樹さんと、池田光さんの三人で編集・解題した。
伊藤さんは折口信夫について、岡野弘彦さんの話から特に二つのことを挙げ た。 折口信夫の学問の本質は、感激にあり、何かに触れた時に、自分の中で 感じたことを一番の基盤にして、語っていた。 もう一つは、イマジネーショ ンが根底になっていること。 目の前の学生や同僚と対する中で、どんどん練 って行って、つくった学問だということ。 授業の中で、興に乗って、ふくら み、広がり、深まる。
『池田彌三郎ノート 折口信夫芸能史講義 戦後篇』(上)の目次だけ書いてお く。 昭和20年度、22年度、23年度の「芸能史」、23年度「都民講座」。 昭 和20年度は、かづらもの、日本芸能における男芸女芸の研究、神がかりの動 作以外のもの・定家・通小町・墨染桜・雪、乙女の舞。 22年度は、芸能史を 芸能自身から釈いてゆく行き方、翁・松、鏡板の松、傘、道中芸、能役者・祝 福芸、祝言職、旅行、くぐつ・ほかひ、芸能団の遊行、放浪、旅行の文学、漂 泊者の芸能、歌舞伎芝居の一考察、かぶきの草子、歌舞伎の話の結論。 23年 度は、語義、鎮魂法、鎮魂儀礼・あそび、神あそび・狂乱、宮廷の神楽・はい りこんだもの、ものぐるい、つきもの、狂女・百万 山姥・かつらおび、芸能と 宗教の関係・修羅物、舞踊、舞・神迎え、女舞、東遊び、東の歌、武官 ものの ふ・相撲の話、相撲(一)(二)(三)。
つづいて、写真家・民俗研究家、芳賀日出男さんのスライドショーがあった。 慶應義塾大学文学部卒業。 94歳、車椅子で登場されたが、お元気で明瞭な説 明をなさった。 撮りためた日本の祭や民俗芸能の写真が、『折口信夫芸能史講 義』によく対応している例を、沢山挙げた。 折口信夫は、芸能で大切なこと として「中門口(ちゅうもんぐち)の芸能」ということを言った。 平安時代 の寝殿造で、東西の対屋(たいのや)から釣殿に通ずる廊の中ほどにある門、 そこへ民俗芸能団がやってきて、田楽などの芸能が披露された。 春日若宮御 祭礼図では、宮の入口で芸能が行われた。 千秋(せんじゅ)万歳、三河万歳 が、家の入口に来る。 平安時代から、徳川時代、そして現在に至っても、い ろいろな祭や踊り、芸能が日本各地で行われている。 芳賀日出男さんの写真と文で、『折口信夫と古代を旅ゆく』が2009年に慶應 義塾大学出版会から刊行されている。
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