「三遊亭兼好独演会」のマクラ ― 2015/11/18 06:30
15日、「三遊亭兼好独演会」を聴きに行った。 場所は本駒込地域活動セン ター、駒込地区高齢者6クラブの主催である。 中心になって準備をし、当日 司会を務めた富士前福寿会の川口政利さんが、家内の中学の同級生で、誘って 下さった。 立派な会場に、180というパイプ椅子が並べられている。 舞台 の上の高座は、ビール瓶のケースか何かで手作りし、日暮里の繊維問屋街で調 達した生地を富士前福寿会小林会長夫人がミシンで縫い上げたという緋毛氈が 掛けられている。 仲入後の小林会長の挨拶によれば、文京区の人口21万人、 内65歳以上が2割の4万1千人で年々増えているが、高齢者クラブの加入者 は4千人で、こちらは年々減少している。 この会は会員増強活動のイベント 第一弾で、クラブの活動を支援している文京区から補助を受け、木戸銭は無料 だ。 夜来の雨も上がり、主催者のご努力で、180の座席は一杯になった。
黒紋付の羽織着物で登場した三遊亭兼好、客席を見回して、今日はちょうど いい年齢のお客様だ、と言う。 80代の方が世話人で、90、100という人が集 まっている会へ行くと、音がしない。 拍手はしているが、聞こえない。 笑 い声がなくて、ただ揺れている。 明日(あした)を担う人はいなくて、明日 はいよいよという人ばかり。 ここは、男女のバランスもいい。 男性ばかり の、商工会なんかだと、笑わない。 笑うもんか、と対決姿勢。 休憩でタバ コを喫いながら、あやうく笑うところだった、などと。 女性ばかりでも、や りにくい。 落語は、明るいところで演るので、全員が見える。 着物の方が いる、若くてきれいなひとがいるな、と気になって、落語を忘れる。 今日は、 やりやすい。
落語は、世界一不親切な演芸だと、言われる。 聴く人が、頭をつかう。 知 識、想像力、人生経験がないと、笑えない。 頭の悪い人は笑えない、とも言 える。 たとえば、侍を出す(と、羽織を脱ぐ)。 噺家も、努力はする。 長 い刀と、短い刀。(それぞれ、抜くところを、やってみせる) 飲み食いの、ふ り。 羊羹と饅頭を、食べわける。 私ぐらいになりますと…、(と、やってみ せる) 羊羹は、歯型の跡がはっきりつくので、最初から羊羹を見ながら食べ る。 饅頭は、後で見る。
こうして人の集まる所は、いい、人の力が出る。 だが、刑務所や病院はよ くない。 奥さんが、あっちが痛い、こっちが痛いと、旦那に言う。 どっか いたくないところはないのか? あなたのそば。 一日に三回笑うと、免疫力 が高まるんだそうで…。 70歳以上の人は平均して、7種類の薬を飲んだり塗 ったりしている。 抽斗にいろんな薬が入っている。 医療ミスというのは、 家庭内が一番多い。 お爺さんの痔の薬を、お婆さんが飲んだりする。
旦那が定年になって、家にずっといる。 男性ホルモンは、(部下など)人に 頼られないと下がる。 奥さんは、一日に何回か、甘えるといい。 鼻声を出 す、お金はかからない、いやでしょうけど。 それも、70か80ぐらいまでで …。(と、それ以上の人の鼻声をやってみせる)
11月22日は「いい夫婦の日」だそうだが、結婚式の司会の仕事が多い。 年 間50組も、やったことがある。 それだけやると、この夫婦が大丈夫か、駄 目かが、わかる。 天皇皇后両陛下、とても「いい夫婦」だ、喧嘩したのを見 たことがない。 皇太子さまは偉い、イクメンというけれど、家の中のことは 全部なさるそうで。 オール殿下。 これが言いたかった。(拍手)
誓いの言葉、というのがある。 牧師さんか神父さんか、英和辞典か何かを 持って、「アナタガタワーー、ゲンキナトキモー、ヤメルトキモー、……チカイ マスカー?」なんて聞くと、新郎新婦が間抜けな声で「ハイ」なんて答える。 あの牧師さんか神父さん、長いこと日本にいるんでしょ、もっとなめらかに日 本語をしゃべれないもんですかね。(と、ざっくばらんな調子で、やってみせる) なめらかだと、どうも誓いにくい。 「アナタガタワーー」が、いいのかも。
神社の神前結婚式の三々九度、お盃の朱色に、日が入って反射すると、白無 垢のお嫁さんの頬に赤みが差して、美しい。 これも(高座の緋毛氈を指し)、 無駄に赤いのは敷いていない。 その時、美しくない人は、おしまい。 盃事 で、介添の人が、大丈夫ですか、なんて聞く。 大丈夫、初めてじゃないから。
披露宴は、長くなる傾向がある。 2時間。 花束贈呈で、お父さんが泣く。 怖い顔の人ほど泣く、人を三人殺めたような、鬼瓦みたいなお父さんが泣く。 それをコピーしたような娘。 お父さんが「行かせたくない」と座り込み、「泣 かないの!」とお母さん、「しようがないでしょ、来年50になるんだから」。 それが、みんなマイクに入っている。
「介錯人を頼まれた」。 「媒酌人、仲人だろう、よかったな」と、「高砂や」 の噺に入った。
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