『夏潮』100号と「虚子への道」<等々力短信 第1077号 2015.11.25.>2015/11/25 06:32

 本井英先生主宰の『夏潮』が11月号で100号を迎えた。 2007(平成19) 年8月25日「等々力短信」第978号に「俳誌『夏潮』の誕生」を書いてから、 8年3か月が過ぎた。 『夏潮』会員としての私は、その間、毎月雑詠5句、 課題句3句で計800句、正月号の親潮賞応募20句、渋谷句会やその他句会や 吟行を加えると、1000句に近い句をつくったことになる。 だが全く上達せず、 毎度苦吟、無理やりひねり出す。 英先生はいつも、俳句は楽しいとおっしゃ る。 10代から50年以上の作句で、「句帖」は232冊、およそ12万句を詠ん だことになり、その多くが「吟行」で「生まれた」そうだ。 「ひねり出す」 と「生まれる」、凡人と俳人の差は、限りなく大きい。

 本井英先生の俳句への姿勢、『夏潮』の立場は「出会うことのなかった大虚子 に憧れて、ひたすら虚子を求め、さらに虚子の求めた彼方を探る」ものだ。 そ して「元禄の俳壇を代表するのが「芭蕉」であるのと同様に、近代の俳壇を代 表するのが「虚子」である」、「極論すれば「芭蕉」を探求すれば元禄の俳壇は およそ察することができるように、近代の俳句は「虚子」を探求すればほぼ理 解できる」とする。 日々の句作に関しては、「客観写生」・「花鳥諷詠」の立場 を徹底して「季題」に立ち向かう。 「客観写生」という態度で周囲を凝視す る時、「造化の神」は初めてその霊妙な姿の一端、具体的には「花の開落、鳥の 去来」を見せてくれる。 「花鳥諷詠」とは、まさにこうした「造化の神」の 玄妙に触れることではあるまいか、と英主宰は説かれる。

 高浜虚子の生涯を丹念にたどった主宰の連載「虚子への道」は、『夏潮』100 号で第100回となり、虚子著作リストで完結した。 虚子研究の基礎編、虚子 ハンドブックをめざして書き始められ、長年のご研究と毎回のご努力で、素晴 らしい作品に結実した。 早々に単行本として出版され、多くの人に活用・利 用されることを期待したい。

 「虚子への道」第31回(2010年2月号)は「ホトトギス二百号」だった。  大正2年5月10日発行の『ホトトギス』200号の巻頭に、虚子は記念として、 句集出版の事、能楽開催の事、本号から6ヶ月間俳句講義連載などを掲げてい る。 英主宰がアイディアマンなのは衆目の一致する所だが、それも虚子から 来ているのかと思う。 句集は、単行本にはならなかったが、翌大正3年正月 『ホトトギス』巻末付録「自選類題虚子句集」となり、それを本誌から剥ぎ取 り、若干の補綴を施せば、ほとんど単行本として持ち歩けて、虚子の「本」に 対する融通無碍な態度が見られて面白いという。 能楽は、記念パーティーの なかった往時に賑やかな顔ぶれが集まり、俳句講義は、現在『俳句とはどんな ものか』として角川文庫(解説・深見けん二氏)に入っている。

コメント

_ 轟亭(「虚子への道」一覧) ― 2015/11/29 07:08

11月29日に「本井英先生の「虚子への道」一覧」を書きました、ご参照下さい。

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