藤沢周平を描いたテレビドラマ2016/07/16 06:31

 気持のよいテレビドラマを見た。 ときどき涙が出た。 4日にTBSテレビ が放映した『ふつうが一番』である。 作家・藤沢周平が「暗殺の年輪」で直 木賞を受賞するまでの、雌伏の時代を描く。 藤沢周平の話で、しかも松たか 子が出るというので、見たのだった。

 藤沢周平=小菅留治(東山紀之)は『日本食品加工新聞』という業界新聞社 に勤め、妻が娘を生んで8か月で死んだため、その娘を幼稚(保育)園に送り 迎え(いつも遅刻で叱られる)しながら、足の悪い母親たきゑ(草笛光子)と つましく暮らしている。 娘が、みんなは母親のつくった手提げ袋を持ってい ると泣けば、古い背広をほどいて、徹夜で縫ったりもする。

 付き合っていた和子(松たか子)を大事な話があると、ロダンという喫茶店 に呼び出し、取材先の社長にもらった上等のハムを喫茶店の包丁を借りて二つ に分ける。 包丁を持って来るロダンのぶっきらぼうなウェートレス(熊谷真 実)の、とぼけた味が一役だ。 大事な話というのは、プロポーズ。 小菅は 和子の父(前田吟)を訪ねるが、再婚で子持ち、給料の安い小菅に絶対反対、 裕福な医者との縁談もあるなどと、けんもほろろだ。 しかし、和子の見せた 小菅が多忙で窮屈な時間の中から送った毎日の手紙の束を見、和子の固い決心 を聞いて、娘をよろしくと、頭を下げる。

 四人の生活が始まる。 初めは口も聞かず、目を合わせなかった幼い娘だが、 歌を一緒に歌ったりして、すぐに和子に馴れる。 八百屋のおばさんに継母と 言われて泣く娘に、和子は「ママと母、両方で二倍、二倍」と励まし、抱き合 う。 母たきゑは財布を握っていて、一日五百円を和子に渡し、近所の婆さん 連中と花札を引く。 小菅は三田村鳶魚の『江戸武家事典』や『江戸生活事典』 を机上に、小説を書いていて、三度、直木賞の候補になるが、受賞には至らな い。 ある日、故郷での知り合い、母が山師だという佐藤B作が訪ねて来て、 小菅と酒を飲み、庄内おばこを歌う。 小菅の小説を暗い、直木賞を取れなか った作品も「溟(くら)い海」だもんな、と言う。 酒の一升瓶を買ってきた 和子に、たきゑは財布を渡すことにし、酔っぱらっているから水にしても分か らない、と教える。

 少し大きくなって、言うことを聞かない娘を和子が叱ると、家を出て行方が わからなくなる。 見つかった娘の頬を心配していた和子が叩いて、本当の母 子となる。 和子の急病の際も、小菅が医者(篠田三郎)のところに担ぎ込ん で、ことなきを得る。 業界新聞社の社長(角野卓造)は小菅に、小説を書い ていることは会社のみんなが知っている、論説を書く仕事にするから直木賞を 取れ、もし取ったら、授賞式のスピーチで会社と、自分の名前を言ってくれ、 と恥ずかしそうに頼む。

 家庭生活は安定した。 「一番の愛読者」という和子や家族が心配し、イラ イラして待つ小菅に、とうとう直木賞受賞の電話がかかってくる。 和子は、 直木賞作家・藤沢周平が授賞式で着る背広を用意していた。 授賞式のあと、 食事でもしようと夫妻は、思い出の喫茶店ロダンで会う。 ウェートレスは、 包丁のことを覚えていた。 夫妻はハムサンドを頼んで、二人で分けるのだ。