桂三木男の「だくだく」2016/08/10 06:21

 8月4日は暑い日だったが、第578回の落語研究会。

「だくだく」           桂 三木男

「袈裟御前」           林家 たけ平

「心眼」             柳家 権太楼

          仲入

「よかちょろ」          柳家 さん喬

「怪談牡丹灯籠より お札はがし」  入船亭 扇遊

 桂三木男、金原亭馬生の三番弟子といったが、四代目三木助の姉の子、三代 目三木助は祖父だ。 クリーム色の着物に、青い羽織。 落語研究会は3時間 コースだからすごい、お客様も命をかけて聴こう、研究するぞと、本寸法だ。  笑わせなくても、わかるぞと。 そう思っているんだろうが、思うのは大事だ。  3か月に一度の独演会が一番つらい。 お客様が大丈夫だみたいな顔をする、 真打近いよ、とか。 毎回ゲストを呼び、前回は喬太郎師で、満席になった。  アンケートに、ゲストの方が面白かった、と。 お客様が楽しもうと思って下 さることが大事。 師匠は、前座の時は、大きな声を出せ、二ッ目になったら、 自分が上手いような気持でやれと、教えてくれた。 思うことは大事だ。

 先生、大家に出てけって言われて、引越しをすることになりました。 店賃 を1年と12か月溜めた。 2年は2年だろう。 1年と少しみたいに感じる。  わずかばかりの銭で引越しということになって、安いけれど、驚くほど汚い所 を見つけた。 これで住めるのか、という所。 実は先生の隣の空き店。 な んだお前さんなのか、ここは壁が薄い、静かにしてくれ。 先生は絵の先生、 お願いがあります。 部屋中に模造紙を貼りつけたんで、家財道具の絵を描い て下さい。 家財道具があるつもりにする。

 まず、床の間を描いて下さい。 うまいね、掛軸を、「落語研究会終演九時半」 と。 金庫、扉が開いて、札束がこぼれているところ、1億6千万円。 時計、 動くつもりで。 箪笥、桐の五段重ね、下から二番目が開いていて、高そうな 着物が飛び出ているところ。 ラジオ、天気予報やっている、吹き出しに 「晴れ、時々雨、時々曇り」。 茶ダンスに、酒を、甘味も羊羹、厚目に切って。  窓、景色が見える、五月晴れ。 長押(なげし)が寂しいんで、槍を描いて。  元は武士ってところか。 先生、上手いね、立派になりました。 家に帰って、 お茶飲んで、寝て下さい。 お茶も出さないのか。 何にもない、そこの羊羹、 どうですか。 描いたもんだ。

 引越しの疲れで寝ていると、近視、乱視、眼鏡嫌いの間抜けな泥棒が入った。  何だ、こんな長屋で、贅沢な暮しをしているじゃねえか。 妾の仮住まいか、 いい仕事が出来そうだ。 オッ、野郎が寝ているな。 箪笥から着物が飛び出 ているじゃないか。(つかもうとして、つかめない) これ、絵か。 物より、 ゲンナマだ。(手を出して、つかめない) これも絵か。 どうなってるんだ、 この家は。

 泥棒だ、さあ大変だ、でもないな。 面白そうだ、見ていてやろう。 壁に 絵を描いたんだ。 こっちも、盗んだつもりになろう。 箪笥を開けたつもり、 風呂敷を出したつもり、着物や帯を包んだつもり。 「落語研究会終演十時半」 の掛軸を取ったつもり、3億6千万円を盗ったつもり(と、数字が違った)。 風 呂敷が重くて、持ち上がらないつもり。

 粋な泥棒だ、絹布の蒲団を跳ね上げたつもり。 ずっと見ていたつもり。 ほ んの出来心で、家には80歳になるお袋、かかあが逃げて、子供が沢山、暮し が苦しい、と涙ながらに訴えたつもり。 懐の吹き矢を出して吹き、手裏剣を 投げたつもり。 懐のけむり玉を破裂させて、消えたたつもり。 長押の槍を 取って、泥棒の脇腹めがけてブスリと突いたつもり…。 血がだくだくと流れ たつもり。

 (隣の先生が)うるさくて眠られねえ。 この半紙を貼れ、これで壁を厚く するつもりだ。

コメント

_ 轟亭(だくだく) ― 2016/08/10 08:26

たまたま今朝8月10日の朝日新聞朝刊11面「耕論」に立川吉笑が「奇跡を起こす」「思い込みを利用すれば…」で、「だくだく」のことを書いていました。

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