阿久悠作詞の初島小中学校校歌2016/08/29 06:06

 25日の<等々力短信>第1086号『不機嫌な作詞家 阿久悠日記を読む』を 読んだ澤辺正恭さんからメールを頂いた。 澤辺さんはずっと富士急行にお勤 めで、現在は「慶應の水」の富士ミネラルウォーターの事業に関わっている。  熱海沖に浮ぶ初島は、富士急行が昭和39(1964)年から観光開発を手掛けて きた地域なのだそうだが、その初島小中学校の校歌にまつわる、とても良い話 があるというのだ。

 この学校は元々は分校(昭和47(1972)年独立)だったので、校歌がなか った。 遠足で出かけたバスのガイドに「校歌を聞かせて」と言われて、しょ んぼりしたり、子供たちが漁の手伝いをして校歌を作るための資金を貯めたり していた。 それを寂しく思った昭和55(1980)年当時の校長が、阿久悠さ んに手紙を書いて、校歌の作詞を頼んだ。 すると手紙を読んだ阿久悠さんが、 三木たかしさんと二人で島を訪れ、作詞作曲をしてくれたのだそうだ。 しか も無料でやってくれたという。

 熱海市立初島小中学校の校歌、阿久悠作詞、三木たかし作曲の『地球の丸さ を知る子どもたち』は、昭和55(1980)年11月に制定された。

   「空にも道がある 海にも道がある 流れる風にも 道がある 歩けよ たずねよ 自然の子らよ 太陽と語れよ おおらかに 君らには あり余る光 があり 君らには あり余る愛がある 視界は はるか 三百六十度 地球の 丸さを 知る子どもたち 初島 初島 ああ 初島

季節は誰よりも やさしい道しるべ 走れよ 歌えよ みどりの子らよ 黒潮と語れよ はれやかに 君らには はちきれる心があり 君らには はち きれる夢がある 視界は はるか 三百六十度 地球の丸さを 知る子どもた ち 初島 初島 ああ 初島」

 澤辺正恭さんは「視界は はるか 三百六十度」、初島灯台から見ると、全く その通りだと言う。

『不機嫌な作詞家 阿久悠日記を読む』を読むとわかるが、阿久悠さんの自宅 は伊東の手前の宇佐美にあって、東京の事務所に通う時に、いつも初島は見て いたわけだ。 淡路島の出身だったから、島の小学校というのにも、思い入れ があったのかと思われる。 校歌が出来た昭和55年は、阿久悠さんが『瀬戸 内少年野球団』で直木賞の候補になった年であった。