六丁目、永六輔さんの俳句2016/09/21 06:19

 永六輔さんは、光石宗匠こと入船亭扇橋以下、小沢昭一、江國滋、桂米朝、 神吉拓郎、加藤武、矢野誠一、大西信行、永井啓夫、三田純一、柳家小三治の 各氏がメンバーの「東京やなぎ句会」で俳句をやっていた。 俳号は「六丁目」。 「東京やなぎ句会」編の『友あり駄句あり三十年』(日本経済新聞社・1999年) に、永六輔さんが昨日最後に書いた言葉みたいな、こんなことを書いていた。  今はやめた作詞は著作権収入があったが、俳句は収入とはつながらない。 遊 びなんだから自腹を切って当り前という考え方もあるが、永さんは公開句会を 考え、「東京やなぎ句会」の下部組織として「やなぎエンタープライズ」を設立 し、会員の落語、漫談、講演、芭蕉もやった「俳句興行」を復活、収入源を確 保した。 三越劇場での興行を恒例として、吟行を兼ねて各地に遊んだ。 大 切なのは「おつきあい」であって「作句」ではないという姿勢を貫いてきた。  これでは30年のキャリアはあるが上達するわけがない。 あとの楽しみはせ っかくは寺の子(元浅草の浄土真宗最尊寺)なのだから、句友の葬式を取りし きって、最後に一人残り、預かっているエンタープライズの貯金通帳を持って 旅に出るというプラン。

 『友あり駄句あり三十年』にある六丁目、永六輔さんの「自選三十句」から 十五句を選んでみた。

それぞれの春や伊予土佐讃岐阿波

寝返りをうてば土筆は目の高さ

一瞬の梅が香やがて降りる駅

夢の下を風が流れて籠枕

髪束ねくくりて衿の涼しさよ

朝市に紅を添えたり唐辛子

一昨日の秋刀魚の小骨らしきもの

猫八が虫を鳴く夜の寄席を出る

残菊やすぐ涙ぐむ父といて

この闇のどこに咲くのか沈丁花

ゆるゆると湯舟に沈む初冬かな

音もなく雪見障子の落ちにけり

最後の都電冬めく日の中

古今亭志ん生炬燵でなまあくび

遠まわりして生きてきて小春かな