永六輔さん、自身のための弔辞 ― 2016/09/22 06:23
永六輔さんが、自身のために書いた弔辞が、『大往生』の最後にある。
永六輔さん。 あなたは『大往生』という本をまとめて、タイミングよく、 あの世に行きました。 あなたはいつも無駄のない人でした。 そして、本当 に運の良い人でした。
高校生の時にNHKに投書して採用されて以来、上手に立ちまわって放送文 化賞まで、すべて他人の褌で仕事を展開し、自分の都合が悪くなりそうになる と、喧嘩を売ってでも仕事を乗り替えてきました。
そして、読みかじり、聞きかじりの話をまるで自分が考えたように脚色する 名人でもありました。
そんな時に相手役を選ぶ才能も見事で、あなたの仕事で一人でやったものは 何もないという見事さです。 その相手を利用する巧みさも天性のもので、作 曲の中村八大さん、ミュージカルのいずみたくサン、ラジオの遠藤泰子さん、 長峰由紀さん、芸能史の小沢昭一さん、文章では野坂昭如さん、こうした名前 を挙げるときりがありません。 皆さん、あなたに利用された善人ばかりです。
芸能界で新人を育てるといいながら、その芽を摘んでいたり、ボランティア と称して、実は休みに出かけていたり、中でも尺貫法を肴に遊んでみせたのも 見事でした。(中略)
そんな寄生虫の永さんが、人間らしく過ごしたのは御家族に囲まれていた時 だけではないでしょうか。 旅暮らしの中で、一番好きな旅はと聞かれ、「我家 への帰り道」と答えた永さんです。 その永さんがあの世へ往ったら先に往っ ている皆さんに、またあることないことしゃべりまくることでしょう。
そうかといって、この世に帰って来られるのも迷惑です。 三途の川に流さ れて、あの世にも、この世にもいないというのが、永さんらしい「大往生」 だと思います。
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