「零余子」と「秋の声」の句会2016/10/21 06:24

 13日は、『夏潮』渋谷句会があった。 兼題は「零余子」と「秋の声」。 「零 余子」は、「むかご」「ぬかご」と読み、ヤマイモの葉のつけ根に生じる珠芽。  「秋の声」は、心の耳で聞く「秋の気配」である。 私は次の七句を出した。

むかご飯死んだ親父の猫背して

黄色の葉目当てに零余子探しをり

小粒でも山芋の味零余子かな

捨てられた扇風機あり秋の声

音もなく刺してゆく蚊や秋の声

ポストには葉書一枚秋の声

クライマックスシリーズに負け秋の声

 私が選句したのは、次の七句。

零余子飯汁にも零余子山の宿     明雀

鈴なりや逗子の里山むかご蔓     松子

秋声や母の形見に袖通し       真智子

雲を追ふ雲の早さも秋の声      ひろし

図書室の灯ともりてをり秋の声    和子

秋声やくりかへし訊く母とゐて    淳子

方丈を裏へまはれば秋の声      盛夫

 私の結果は、<むかご飯死んだ親父の猫背して>をこの句会は初参加の祐之 さん、<捨てられた扇風機あり秋の声>を耕一さん、<ポストには葉書一枚秋 の声>を松子さん・盛夫さん・さえさんが採ってくれて、互選5票、主宰選は ゼロと、チョボチョボであった。

 私が選句した句の、主宰選評。 <零余子飯汁にも零余子山の宿>…都会で はあり得ない、面白かった。 <秋声や母の形見に袖通し>…いかにも女の人 らしい句。しみじみとした時間帯。 <雲を追ふ雲の早さも秋の声>…うまい 句。自然の動きの中に、恣意的なものを見ようとする作者の心の動き。 <図 書室の灯ともりてをり秋の声>…「室」が手柄。小学校、中学校の校庭に、子 供はいるかいないか、いてもパラパラ。 <方丈を裏へまはれば秋の声>…い かにも俳句、立派に合格点を取れる句。寺格の高い立派なお寺。