三笑亭夢丸の「附子(ぶす)」2016/11/05 06:34

 三笑亭夢丸、落語芸術協会所属、夢楽の弟子だった先代の弟子だそうだ。 夢 楽なら昔「お笑いタッグマッチ」で見て知っていた。 走って出て来る。 丸 顔でニコニコ、いろんな所で呼んでくれるという。 先日は金沢城、といって も原っぱで、野点のよう。 高千穂、あてどなき山の中、椎葉村の小学校、生 徒4人、落語を教えて下さいと言われた。 網戸を閉めた方がいい、鹿が入っ てくるから。 生徒が一年に一度、宮崎の市内で、話をする機会がある。 年 に4回通うのだが、純朴で生真面目に練習する。 小3の男の子、一生懸命で、 創意工夫をする。 毎回がんばっているね、毎回上手くなっているよ、と言っ たら、「そちらこそ」。

 番頭さん、上総屋さんの婚礼に、ついてってくれ。 貞吉では駄目ですか。  あいつは、悪気しかない、はばかりの中から、悪口を言っているのが聞こえて きた、(歯を)シーシー言う、お世辞を言ってもシー。 権助は? 駄目だ、番 頭さんについて来てもらいたい。 箱の中に蜜がある。 家内は留守で、残る のは貞吉と権助だけだ。 手を出させない工夫をしよう。 附子(ぶす)とい う猛毒だということに。

 あの箱は家にずっとおいてある附子だ。 おかみさんのことですか。 附子 という猛毒だ、手をふれるな。 何でそんなものがあるんですか。 家は先祖 代々の武家の出なのだが、恥をかくのを嫌って、脱藩した。 もらしたんです な。 脱藩だ、恥をかくくらいなら附子をなめる、それで一族郎党死に絶えた。  なぜ、末裔がそこに…、言い訳を聞きたい、説明責任を果せ。 恥という字も 書けなかったのに。

 附子という猛毒だって言うが、嘘っぽいよ、権助、見てみよう。 旦那様の 言う事を聞け。 いつも旦那のいいなりじゃないか。 箱をゆっくり下ろして、 瓶(かめ)を開けるよ、権ちゃん。 甘い匂いだ。 舐めてみよう。 ウンウ ン、ウンウン。 どうだ、美味いか。 美味い。 甘い甘いと、二人でカラッ ポにしてしまった。 えれえことになった。

 こうしよう。 床の間の先祖伝来の壺、裏を見たら、紀州南高梅とあった。  掛け軸は弘法大師の筆というが、ぐちゃぐちゃした字をよく見たら、「人間だも の」だった。 みんな滅茶苦茶にしておこう。

 今、帰ったよ。 部屋がぐちゃぐちゃだ。 申し訳ない、権ちゃんとチャン バラをして、こんなことになっちまいました。 死んでお詫びをしようと、附 子を一舐め、舐めても、死にきれず…。 とうとう箱がカラッポになってしま いました、シー。 嘘だろう。 一つも、嘘をついていません、シー。 おか わりを、お願いします。 何だ、涼しい顔をしているな。 他人の不幸は、蜜 の味でございます。