橘家圓太郎の「おかめ団子」後半 ― 2016/11/07 06:36
おかめ団子のそば。 ウァンウァン吠えてはならねえ。 (小声で)ダイコ、 ダイコ、ダイコーーッ! わかったか、向こうへ行ってくんろ。 お天道様よ、 お月様をあっちへやってくんろ。 明るくっては、困る。 バタン、バタン、 裏木戸がおいで、おいでをしている、どうすべえ。 雨戸が一枚、スーーッと 開いて、お嬢様が出てくる。 トキ色縮緬のしごきを、松の木にかけて、首を 吊ろうとする。 何をするんだ!
(物音に気付いた主人が…)こっちへ来い。 ほんとに、お前さんは好きな んだから…。 ちがうよ。 蝋燭を一本、久造! 起きております。 夜中だ よ。 お休みなさい。 起きろ、裏の様子がおかしい。 盗っ人で。 何とか しておくれ。 けして許しませんから、長い物があれば。 それは、ゴボウだ。 しんばり棒で。 大きな声を出すな。 誰かが、娘を止めて下さっている。 大 丈夫だ。 もういいんだよ、寝なさい。 勘違いだ、逆らうなら、荷物をまと めて出てってくれ。
お嬢さんが首をくくろうとした。 何があったか存じませんが、よーーく訳 を聞いてやってくだせえ。 あなたは昼間の大根屋さん。 お門(かど)を通 りかかりまして。 デェコ、デェコ! 夜中で、家の裏ですよ。 すみません、 私は泥棒でごぜえやす。 大根屋さん。 おっ母さんが、せんべえ蒲団に寝て いまして、起きていた方が楽だと申します。 寝ても覚めても、12、3貫の銭 が立っておりやして、気が付いたら、お宅の裏庭。 あなたは、何も盗んでい ない、なら、泥棒じゃない。 娘を見かけてくれた恩人だ。 私も子供の頃、 賽銭を糸で釣った、婆さんの財布からくすねた。 婆さん、手文庫を。 これ は少ないけれど、娘の命が助かった身祝いの銭だ、5両収めて下さい。 長い ご贔屓も頂いている。 お嬢さん、親不孝をしてはならねえ。 親御様の先に 行くなんて、妙な料簡を起こすでねえぞ。 ここから入ったから、ここから出 て行きます。
おかめ、こっちへおいで。 お前がそんなに嫌がっているとは気が付かなか った。 お前がいいと思うお方が出来たら、おっ母さんに話せ。 おかめが、婿を取りたい、心に決めた人が出来た、と言う。 あの、大根屋 さんとなら、あの太助さん、命の恩人ですから。 毛むくじゃらの、山出しだ よ。 目のまわり、首のところは、真っ白。 月に照らされて、ござっちゃっ たんでしょうね、おかめがうらやましいと言う。 離れに、おっ母さんを引き 取って。 当人に聞いてみよう。
こんな結構な話はない、太助が婿に納まった。 はじかれもんの世の中に、 こんな出世話があるものか。 目のきりっ、きりっとした、愛くるしいのが、 ござっちゃって、繁昌したという、江戸名物おかめ団子のお噂でございます。
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