三遊亭兼好の「風呂敷」2016/11/08 06:31

 結婚式の司会をするのだけれど、最近、年の差カップルが多い。 15や20 の差、お婿さんがお父さんに近いのや、上なんてのもある。 人間だけじゃな い、和歌山のアドベンチャーワールドのパンダ、16歳のラウヒン(良浜)が、  エイメイ(永明)の子を産んだけれど、エイメイは24歳、人間で言えば70歳 位なのだそうだ。 本当にパパなんでしょうかね、夜中に若いのが、白い所を 黒く塗って来たとか、隣のマレー熊が来たとか。 われわれの世界でも、70歳 位の師匠方(名前を挙げたが、ここは略す)にお子さんが生れたといえば、お めでとうを言う前に、真っ先にお弟子さんを考える。 昔から、間男は多かっ た。

 兄(にい)さん、大変なの。 お咲ちゃん、履物も脱がずに、ニワトリみた いに飛び上がって来るな。 火事か。 火事なら、借家だから平気。 ウチの 亭主が、早く帰ってきたのよ。 別に、いいじゃないか。 寄合で遅くなると 言ってハマ(横浜)へ出かけた。

 お湯へ行って、お茶漬さらさらとやって、蒲団を敷いて寝ようとしていた。  町内の若い衆の新さんが通ったので、ちょっと上げて馬鹿ッ話をしていたら、 さっきの雨よ。 雨戸をトントンと閉めたとたんに、ウチの人がへべれけにな って帰ってきた。 早く帰ってきちゃったのよ。 だって、新さんがいるんで すよ。 ウチの亭主は、大変なやきもち焼き、おわい屋さんとちょっと話をし ただけで、汲みっぷりに惚れたな、目が怪しい、コエに落ちたなって。 それ で新さんを三尺の押入れに隠したら、亭主はその前にどっかりと座った。 ち っとも寝やしない。 このままでは血の雨が降る、何とかして下さい、お願い します。

 いつもそれだ、お前が手をつく同じ所が、へこんでるだろう。 女心の赤坂 ってんだ、待ってろ。 俺に考えがある。 ふだんからモロコシの書物を読ん でいるんだ。 春眠赤出しの味噌汁、飲めば飲むほど目が覚める。 女、三銭 の教え、三銭の価値がある。 じかにカボチャをかぶらず、おでんに靴をいれ ず。 悪女、千里を走る、いい女は走らない。 一番いいのは、キミコ(君子) は危うきに近寄らず、キミコ豹変すだな。

 熊、いるかい。 兄ィ、会いたかったよ、聞いてもらいたい話がある。 カ カアに小言を言ってもらいたい。 今日は遅くなるから寝てろって言って出か けて、早く帰って来た。 途中で大雨だ、居酒屋に入ってね、へべれけになっ た。 開けろ! 開けろ! 一生懸命叩いたんだ。 ようやく開けると、お前 さん、もう帰ったのって言うじゃないか。 それで早いんだから、もう寝まし ょうよって言う。 おかしいだろ、遅いから寝ましょうよっていうんなら、わ かるよ。 だいたい、もう寝ましょうよなんて言われて、喜ぶのはいつまでで しょう。 一年かそこいら、でしょう。 早い人なら、五日か六日。 それも 緋縮緬の長襦袢を、しごきで締めて、白いうなじにおくれ毛が垂れてね。 そ れが獅子舞みたいな顔して、昆布みたいな着物で、鰹節のような手で。

 実は、知ってる女が来てな、これこれこういう訳で、若い衆を三尺の押入れ に隠したら、へべれけの亭主が早く帰って来て、その前にどっかり座って動か ない、間が悪いことに亭主、大変なやきもち焼きだってんだ、どうにかしてく れって頼まれた。 それは、いくら兄ィでも無理だと思う。 風呂敷を広げて な、こうやって掛けたら、どうかと思うんだ。 どうだ、見えないだろう。 見 えない。 押入れを開けて、早く出ろ、って言ってやる。 礼はいいから、早 く行け、ってな。 下駄間違えんな、って言うな。

 こればかりは、いくら兄ィでも、逃がすことは出来ねえ、と思うよ。