小三治「お化け長屋」のマクラ「落語家」と怪談噺 ― 2016/11/09 06:15
小三治、うつむいて出て来る。 落語家の〇〇さんと、紹介される。 今さ ら、始まったことじゃない。 落語家というのに、何か、ひっかかる。 何で かって言われると、困るが…。 雑誌は、噺家、咄家。 この頃はどうでもい い。 20年から30年前、50代から離れようという頃は、いやだった。 落語 家って、落語家みたいな人ですよ。 いつごろから、言い始めたのか。 以前 は噺家って、呼ばれてた。 いいですけど、よくない。 滑稽な話をやるから 落語家。 いろんな話をするから噺家。 いろんな話がある、芝居噺は、芝居 好きの人が出たり、芝居でしくじったり、芝居がからむ話。 人情話は、好き な人が多く、涙なしで聴けない。 客席に涙がなくて、噺家だけが涙ってこと もある。
怪談噺は、夏のものだが、冬の方が怖いって、お寺の坊さんに聞いた、知っ てるのは永六輔さん位だが…。 寄席は十日、十五日の興行だが、十五日間、 トリが長編の怪談噺をやっていた。 第一話から第二話へ移るところの挨拶は、 怖い顔で「はて、恐ろしき執念じゃなあ」といって、パッと明るくなって、顔 がふつうに変わり「また、明日」。 子供が一番前で、舞台の上に首をのせてい る。 毎日だから、「はて、恐ろしき」のところで、「執念だろ」って言う。 「妄 念じゃなあ」。 次の日は「はて、恐ろしき」、「妄念だろ」。 三日目、「はて、 恐ろしき」、「執念かい、妄念かい?」、「残念だ」。
前の林家正蔵師匠……、これ思い出さなきゃあ、よかった。 怪談噺、素話 (すばなし)じゃなくて、舞台装置を使う。 虫の音なども、チチチチ…と虫 笛、鐘の音も、ゴォーーーン。 憶えていたのは、高座に白いケブ(煙)が流 れてくる、霧。 どうしたかっていうと、ほら、あれ、水に入れるとボコボコ 出て来る。 (客席から)「ドライアイス」。 そうドライアイス、これからは 自分一人では出来ない。 なぜか熱湯に入れた。 違うんじゃないかと思いま すが、ドライアイスに熱湯を掛けてやっていました。 危ない。 亡くなった 正楽さん、太った人で、熱いのをアルミの洗面器に入れようとして、つまずい て、アッチッチ。 熱湯が高座の正蔵師匠の所にかかって、イテテェーッ。 面 白いところではないけれど、あんな面白いことはなかった。
釈台は、上がガラス張りの、怪談用。 ランプが四つついている、赤、青、黄、 乳白色。 自由に色が変えられる。 正蔵師匠がやっている。 「その時、コ ウエツが…」で、真の闇になる。 怯えた客のそばに、幽霊が出る。 前座で、 お化けに合いそうな体形なのがやる。 キャーーッと、女の声。 女の人に限 る、男はダメ、殴るから。 女は跳ねのける人と、抱きつく人がいる。 長年 やっているから、わかる。 そこから驚きの輪が広がる。 やがて気づいて、 ウフフ、ウフフと、笑いが場内に広がることになる。
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