「神無月」と「時雨」の句会2016/11/16 06:34

 そこで11月10日の『夏潮』渋谷句会である。 兼題は、その「神無月」と 「時雨」だった。 寒い日で、渋谷の駅から、会場のリフレッシュ氷川に向う 途中、時雨れてきた。 私が出したのは、つぎの七句。

思ひなしのどかな社神無月

黄色い葉つぎつぎ散りて神無月

神在や客のあふれる善哉屋

しぐるるやスクランブルの交差点

しぐるるや中韓台の人ばかり

夕しぐれスマホ見つめる白き顔

しぐるるや薄くなりたるわが頭

 私が選句したのは、つぎの七句。

名を変へて流るる大河神無月    英

旅からの妻の便りも神無月     ひろし

神無月軒の杉玉古りしまま     なな

身を寄せしことも時雨の想ひ出に  英

バス停の二駅程も時雨しや     ひろし

時雨るるや尼の手足の小さし白し  さえ

時雨傘差すまでもなく店に入る   明雀

 私の結果は、「鳴かず飛ばず」の極み「音なしの構え」、文字通りの時雨、 <しぐるるやスクランブルの交差点>を、ななさんが採ってくれた貴重な一票 のみだった。 季題研究の時はいつも、そちらに気が行ってと言い訳している が、それというのも、いつも「鳴かず飛ばず」ということなのだろう。 トホ ホである。

 京都を詠んだ句が多く、季題「時雨」のそもそもが京都であることを、初め て知った。 陰暦十月は時雨月ともいう。 初冬の頃、急にぱらぱらと降って は止み、霽(は)れてはまた降り出す雨。 時雨は時雨移りといって夕立のよ うに山から山へと降り移って行くことが少なくない。 京都の北山の時雨など、 ことに趣が深いと、『ホトトギス 新歳時記』にあった。

披講されて、誰も名乗りのないのを、「座敷童」(が詠んだ)と言うことも今 回知った。 俳句をやらない方はご存知ないだろうが、句会では自分の句は選 句しないルールになっていて、うっかり選んでしまうことを、「殿、ご乱心」と 言う。 でも「姫、ご乱心」というのは、聞いたことがない。