毒舌先生の俳句添削 ― 2016/11/19 06:37
テレビのバラエティー番組で、芸能人のつくった俳句を小気味よく斬り捨て、 見事な添削の技を見せている俳人、夏井いつきさんをご覧になったことがある だろう。 9月の<等々力短信>に書いた「らじる★らじるNHKネットラジ オ」の「文化講演会」に、その夏井いつきさんと川柳作家の島田駱舟さんの対 談「川柳VS俳句」というのがあったので、聴く。 6月3日に伊香保で行な われた川柳大会での録音だという。
夏井いつきさん、俳句集団『いつき組』組長、そこに集うのは組員、事務所 に来た人が恐る恐る「土木関係ですか」と聞くという、組長がこんなに可愛い のに、と。 俳句を通して、日本語の豊かさ美しさを愛してくれる人を一人で も増やしたいと、松山で月刊俳句新聞『子規新報』に、「それ行けミーハー吟行 隊、俳句バージンと吟行に行く」を連載した。 周りの人が、その集団を『い つき組』と呼んだので、組長になった。
(『プレバト!!』(TBS系で隔週木曜放送)の話になる。) 芸能人の俳句 を添削している。 普段の句会では、あそこまでヘタな句は、採らないし、互 選もされないので、添削の対象にならない。 それを何とか意味のあるものに しろって言われて、制作側と大喧嘩した。 ところが、格闘して、それをやっ ている内に、俳句のメカニズムがわかり始めた。 俳句を30何年やっていて、 一番得したのは、私。 (駱舟さん…謙虚ですね。) 謙虚ですよ、あれは句が いけない、腹立つ。 (毒舌先生。) 怒っていますよ、この文字ヅラで、かっ て。 (いつも和服。) あれは制作側の無知、和服でって言われて、持ってな いよ着物! 俳句というと、緋毛氈の上で、短冊に、筆で書く、と思っている。 「五七五の間を空けないで一行で縦書きにする」のが、俳句の基本的な表記な のに、五七五の間を空けた俳句を、何回も、何回も送って来る。 (おっかな い。) 川柳の駱舟さんには、真綿にくるんで嫌味を言う芸がある。 和田アキ 子さんが、番組を終わって帰る時に、この世界に入って、頭ごなしに怒られた のは、先生が初めてです、と言った。
ここでちょっと「文化講演会」を離れて、夏井いつき著『超辛口先生の“赤 ペン”俳句教室』(朝日出版社)から、和田アキ子の句の添削を見る。 「季語 を主役にする工夫。季語を味方にしましょう」というところに、その句はある。 <江ノ電であじさい香る鎌倉へ>。 季語は「あじさい」で夏。 「この句の 問題点は、「江ノ電」「鎌倉」と一句に二つの固有名詞が入っていることです。 固有名詞は強い印象を与える言葉ですから、この二語に挟み撃ちされた「あじ さい」は主役としての精彩を欠きます。「鎌倉」という地名がありますから、電 車に乗っていることが分かれば、「江ノ電」かな? と想像してもらえます。」 「で」は散文的な助詞。 「あじさい香る」は、作者の詩的表現♪ 「鎌倉へ」 は、方向を示す助詞「へ」の使い方うまいね! 【添削後】<車窓眩しあじさ い香る鎌倉へ>。 「こうすると「あじさい」は主役として一歩前に出てきま す。まだ眼前にない「あじさい」ですが、作者の「あじさい」を思う心が「あ じさい」を主役に押し上げてくれます。」
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