柳家喬太郎の「茶代」2016/12/02 06:29

 われわれ芸人は、形形(なりかたち)をちゃんとしていなくてはならない、 と思う。 普段着も。 ヒゲや髪形も。 ちょいと無精して、中途半端な髪の 伸び方になった。 この会は楽屋にメークさんも来ているんだけれど。 この 髪の毛、微妙にトランプっぽいでしょ、白いからいいけれど、黄色かったら、 まさにトランプ。

 落語家って、紹介してくれればいいんだけれど、身分証明がない。 マイナ ンバーのカードは面倒だ。 パスポートだが、海外はほとんど行っていない。  20年ほど前、クルーズ船に乗った、渡し船じゃござんせんよ。 瀬戸内周遊、 一回は韓国へ行った。 チェジュ島、済州島、3時間ぐらい上陸した。 私の 師匠はさん喬、物真似をする人がいるけれど…(笑)、しょっちゅう海外へ行く。  ついて行ったことはない。 行こうよ、俺、師匠だよ。 知ってますよ、海外 に行けば、皆殺しになる。 私は、毎年行ってるよ。

 学校公演というのがある。 芸術鑑賞会、授業の一環ということで、聞きた くもない500人の前でやる、これがつらい。 交通が便利になって、倶知安(く っちゃん)の学校へ、日帰りで行く。 羽田まで1時間半、新千歳まで1時間 半、小樽まで1時間半、小樽駅前では手配してあるわけでなく、タクシーを拾 って1時間半で倶知安、合計7時間、往復で14時間かかり、実働は25分。 富 山、夜の落語の仕事でも日帰り。 今日も、泊まりたい、半蔵門に。  旅館などで、仲居さんに茶代を置く。 海外ではチップが当り前というけれ ど、ちょっと抵抗がある。 われわれは日頃、チップで食ってる商売。

 喜助、もうすぐ江戸だ。 おら、江戸は初めてで、楽しみでごぜえます。 仕 事が終ったら、三日四日、江戸見物することにしよう。 喜助、楽しみでごぜ えます。 旅の途中では、茶代を三文、四文置いてきたが、江戸は将軍様のお 膝元、六文から八文置かなきゃあならない。 それは旦那様のなさることで。  おらは主、お前が出した方が形が良い。 見栄、それが商人の見栄というもん だ。 六助と呼んだら六文、八助と呼んだら八文出してくれ。 おらは喜助で ごぜえます。 ヘエ、ヘエ、と言ってればいいんだ。 と、符丁を決めた。

 そこの茶店に寄ろう。 ちょっくら、ごめんなんしょ。 江戸は、忙しない ところで。 今日は遊郭という所へ。 吉原ですか、品川じゃ、最近心中があ ったとか。 素見(ひやかし)に。 雲行きが怪しくなってきた。 ポツリ、 ポツリ、降って来た。 お宅で傘を貸してくれないか。 ウチは貸傘はありま せん。 喜助、宿へ行って、二本借りて来い。 えれえ降りだな。 夕立。 御 御(おみあし)足が濡れました、雑巾を。 親切な方で。

 雨も上ったんで、ひと足先に行く、お代は連れから貰って。 供の八助から 貰ってもらいたい。 こないだは、六助だったよ、旅の符丁なんだろう。

 旦那は先にいらっしゃいました。 茶代は、おいくらで。 茶代はお供さん の百助さんから貰えとおっしゃつてました。 ちょっくら困ったな、おら三十 二助しか、持っとらん。

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