柳家小はぜの「たらちね」2016/12/30 06:39

 26日は今年最後の落語研究会、第582回だった。

「たらちね」    柳家 小はぜ

「四段目」     隅田川 馬石

「鰍沢」      林家 正蔵

       仲入

「だるま」     三遊亭 歌武蔵

「睨み返し」    柳家 権太楼

 柳家小はぜ、前々回までメクリをやっていたご褒美の高座なのだろう。 前 座の柳家あおばより前に、フライイングでツルツルの頭を出し、笑われる。 自 分でメクレバいいのに、と私。 いきなり、縁といえば、ご夫婦、縁は異なも の味なもの、独活が刺身のツマになる、と始める。 大家が、八っつあんに、 身を固めるつもりはないか? とても、というと、一人口は食えないが、二人 口は食える、というじゃないか。 汚れた洗濯物を人に頼めばお足がかかる、 外で飯を食えばお足がかかる。 世話をしよう、歳は二十、器量は十人前優れ ている、箪笥、長持の二棹も持って来る。 そんないい話、どこかにキズがあ るな。 わかるか。 横っ腹に穴が開いていて水が漏るとか、寝小便か、寝小 便ならあっしもやる。 父親が漢学者で、本人は京都のお屋敷に奉公していた んで、言葉が丁寧すぎて、わからない。 私も先日、道で会ったが、「こんちょ うより、どふうはげしゅうして、しょうしゃがんにゅうす」と来た。 「今朝 より、怒風激しゅうして、小砂眼入す」だそうな。 「それはカンザンシュウ セキでございますな」と言った。 何? 親父の戒名だ。 ハイ、下さい、そ んなんなら、かまわない。 手を出すことはない。 今日下さい、今日、思い 立ったら吉日という。 よく知っているな、よし今日輿入れをしよう。 腰だ けですか。 掃除をしておけ。 掃除はやってます、春と秋に。

 ありがてえな。 隣の婆さん! 子供の生まれるもんが来る。 この長屋で、 独り者というとお前さんと、ラオ屋の多助さんだけ、多助さんは72だ。 ウ チに来るんだ。 おめでとう、掃除はやっとくんで、湯へ行ってきな。

 <八寸を四寸ずつ食う仲のよさ> 「ちょいと、お前さん」、「あなたや」な んて、言うのかな、困ったよ。 沢庵でお茶漬けを食うのも、少しのご飯を清 水焼の茶碗に象牙の箸で、「チンチロリン、サックサク、ポーリポリ」。 こち とら五郎兵衛茶碗に杉箸で、「ガンガラガン、ザックザク、バーリバリ」。 あ の騒いでる家が、ご亭主になる人の家だ。 おい、八、連れて来たぞ。 ご亭 主、おかみさんになる人だ。 仲人は宵の口という、私はお開きだ。 ちょい と、大家さん。 行っちゃったよ。

 いきなり、二人きりか。 ガサツもんだが、兄弟同様に付き合ってもらいた い。 賤妾浅短にあって是れ学ばざれば勤たらんと欲す。 なになに金太郎を 干すのか。 名前はなんてんだ。 汝、わが姓名を尋ぬるや。 清兵衛は大家 さんだ。 そもそも我が父は京都の産にして、姓は安藤、名は慶三、あざなを 五光、母は千代女と申せしが、わが母三十三歳の折、ある夜丹頂の鶴の夢を見 て孕めるがゆえに、たらちねの胎内を出でしときは鶴女と申せしが、それは幼 名、成長の後これをあらため清女と申しはべるなり。 それ、一人前かい、覚 えられないよ、書いてくれ、四角い字はダメだよ。 そもそも我が父は京都の 産にして……、ナムミョウ、チーーン、ご親戚の方からご焼香を。 隣の家は、 お光、覚えやすい。 湯へ行く時も、火事の時も、困る。 まあ今日は、寝ち まおう。

 カラスカアで、夜が明けた。 アーーラ、わが君、シラゲのありかは、いず くにあるや。 シラゲは、米(よね)のこと。 米は友達だ。 人名にはあら ず、コメのこと。 そこのみかん箱にある。 汁の実に何か。 葱! 岩槻葱!  門前に市をなす賤(しず)の男の子や、男の子、一文字草を朝餉(あさげ)に 買い求めるが、値はいかほどか。 一把八文で。 ただいま旦那様に伺うゆえ、 門の敷居に控えておじゃ。 腹掛けに、こまかい銭がある。

 アーーラ、わが君。 日も東天に出御ましまさば、うがい手水に身を清め、 神前仏前に御燈明(みあかし)を供え、御飯も冷飯に相成り候えば、早く召し 上がって然るべう存じ奉る、恐惶謹言。 飯を食うのが恐惶謹言なら、酒を飲 んだら酔って件(くだん)のごとしか。

 小はぜ、にこやかで、なかなか上手い。 ご褒美組としては、上々の出来だ った。