防衛大学校校長としての槇智雄 ― 2017/01/08 06:52
国分良成さんの講演「防衛大学校と慶應義塾」のつづき。 槇智雄が影響を 受けたのは、福沢諭吉、小泉信三、英国流政治学(恩師アーネスト・バーガー。 哲学的表現が多い)、カレッジ生活、井上成美等々である。
「第一に諸君の任務は偏することなき人物を要求していること、第二に諸君 の任務は民主制度に対して的確な理解を要求していること、これであります」 (1953(昭和28)年第1期入校式式辞、『防衛の務め』21頁)
「規律なくして真の自由はなく、遵法精神または正義に服従する意思なくし て真の民主制度は成立しません。・・・われわれは個性の発展を重視するととも に、大きな期待をこれにかけるものであります。・・・個性は野放しのものでは なく、また個人の自由は放縦を意味するものではありません。・・・正しいこと を目指すことにおいてのみ個性の発展があり、正しき行いにおいてのみ自由が あるのであります。」(同23頁) →→池田潔著『自由と規律』(岩波新書)
「士官にして紳士」(同27頁)、「高い身分には義務が伴う、Noblesse oblige」 (同29頁)、「規律、自主、信頼」(同30頁)、「われわれは大体三つの目標を 考えております。一つは立派な社会の一人であるとともに有用な国民の一員で あること、他の一つは立派な部隊幹部であること、さらに他の一つは立派な学 識を持つ人たることであります」(同46頁)。
「学生隊と校友会を、われわれは知能技術における教室、訓練における訓練 場、または様々のところで行う演習の場と同様に、幹部自衛官の人柄の養成場 と考えているのであります」(同181頁) →→自主自律精神の涵養
「この特異独特の教育体系は、理工学に重点をおきますが、これを専門教育 または職業教育と考えることを極力避けて、むしろ全体を流れる教育上の主義 は、一般またはリベラルの色彩の濃いものであるのであります。専門教育を急 ぐの余り、諸君の年齢期にあって修得せねばならぬものを失うことは、厳に慎 まねばならぬとして参りました。人生への準備であり、諸君の一生のことを考 えることが諸君のためでもあり、また自衛隊を利益するものであるとの信念に よったものであります」(同90頁) →→専門教育・職業教育ではなくてリベ ラルアーツ教育(人間性の土台づくり)
「心に遅れをとっていないか、腕に力はぬけていないか」 →→智・徳・体 の融合(頻繁に言及)
「パスカルは『力の伴わぬ正義は無力であり、正義を伴わぬ力は抑圧である』 と言った。防衛組織に正義は常に伴侶でなければならぬ。もしこれなくば防衛 の力は道義的に無力であるか、あるいは忌むべき暴力に堕するであろう」(同 200頁)
「平和は進歩に欠くことのできない要因である。しかし、国の独立を見失う ての平和は何の意味もない。また国民の幸福とその実現に国民の基本的自由は 大切である。しかし、このために国民は国を守る責任から解放されるものでは ない」(同213頁) →→福沢精神の表出、「独立の気力なき者は国を想うこと 深切ならず」(『学問のすゝめ』)
防衛大学校と慶應義塾との歴史的紐帯=福沢精神(「一身独立して一国独立す ること」(『学問のすゝめ』))
「塾(慶應義塾)ではやれなかったことを、もう一度、防衛大学校でやった」 (昆野和七(塾職員)「槇智雄先生の追憶」、『槇乃実 槇智雄先生追想集』1972 (昭和47)年)
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