漱石も垂涎の「料理と酒」番組2017/01/12 06:30

 NHKも、洒落た番組をつくるものだ。 12月の「等々力短信」第1090号 「夏目漱石最後の恋」に書いたドラマ『漱石悶々』「夏目漱石最後の恋、京都祇 園の二十九日間」放送の前夜、12月9日の夜晩く、BSプレミアムで放送され た『あてなよる』である。 「夏目漱石に捧ぐ第二夜 漬物で呑む」とあったの で、ドラマと一緒に録画しておいた。

 夏目漱石役の豊川悦司と、磯田多佳の宮沢りえの出演。 なかに番宣(番組 宣伝)も入るのだが、前夜ドラマを撮り終った二人が、京都の「遇酒且呵呵」 という行燈のある店で、料理研究家・大原千鶴の料理と、ソムリエ・若林英司 の選んだ酒を楽しむ。 『あてなよる』は不定期の番組だそうで、「あて」は言 うまでもなく酒の肴、それのある夜というのだろう。 ネットに「遇酒且呵呵」 を調べた人がいて、「遇酒且呵呵、人生能幾何」という成句、「酒に遇(あ)い て且(しば)し呵呵、人生能(よ)く幾何(いくばく)ぞ」と読むそうだ。 呵 呵(かか)は、「大声で笑うさま。あはは」。

 最初は≪漱石が愛した糠(ぬか)漬け≫。 漱石の孫の半藤末利子さん(半 藤一利夫人)が引き継いでいる糠床を分けてもらって漬けたという、きゅうり、 かぶ、にんじん。 三日漬けたものと、一日の浅漬け。 合わせる酒は、日本 酒で作る梅酒(福島県産)、ラベルは「生酛(きもと)梅酒」と見えた。

 つぎは≪糠床の出し殻を使った和え物≫。 糠床の出汁に使った昆布と干し 椎茸を千切りにする。 きゅうり、赤玉ねぎ、にんじん、大葉も千切りにする。  鶏のササミを網で塩を振って塩焼きにしたのをほぐす。 これらをポン酢醤油、 ゆずの絞り汁を加えて和える。 酒は、日本酒で作った梅酒のジャスミンティ ー割り(氷)。

 つづいて≪白菜の漬物鍋≫。 白菜の漬物と、生の白菜、ねぎを、かつお昆 布出汁の鍋に入れる。 煮立ったら湯引きした鯛の切り身とミニトマトを入れ、 煮込む。 食べる時に、すだち、後ですり胡麻などをかける。 合せた酒は、 シャンパン、19世紀からつづく家族経営のメゾンのもの。 宮沢りえが好きで いつも携帯しているという胡麻をかけてからは、これも宮沢愛飲の18世紀創 業でオレンジ色のラベルが世界的に有名なメゾンの、深めの黒葡萄のシャンパ ン。

 ≪すぐき漬と豚肉のチーズ焼き≫。 豚肉を塩、コショウで炒める。 グラ タン皿に、炒めた豚肉、京都三大漬物の一、すぐき漬(あとは柴漬と千枚漬) の刻んだのを入れ、チーズを乗せて、グリルで焼き、パセリをかける。 合せ た酒は、スペイン産赤ワイン、ガルナッチャ種。

 〆は、≪ねこまんま(卵黄の醤油漬け乗せ)≫。 卵黄は、一晩醤油に漬け たもの。 白いご飯の上にのせ、鰹節とねぎを散らす。

 みんな美味しそうで、家で真似してみたいと思う簡単な料理ばかりだ。 酒 は「金時の火事見舞い」だから、ちょいと舐めるだけだが…。