春風亭昇也の「寄合酒」2017/03/01 06:34

 2月24日は、第584回の落語研究会だった。

「寄合酒」     春風亭 昇也

「百川」      桂 やまと

「夢金」      柳家 小満ん

       仲入

「火焔太鼓」    古今亭 志ん輔

「宿屋の富」    瀧川 鯉昇

 春風亭昇也は昇太の弟子、師匠同様眼鏡をかけている、出囃子は「パイノパ イノパイ」の東京節、「チョウミツ屋!」(?)と声がかかった、実家の酒屋だ そうだ。 早口でポンポンやる。 9人いる弟子の任務は、師匠の嫁候補を探 すことだと、客席を見回し、今日はダメ、と。 ああ見えて師匠、12月には 57歳、7、8歳から10歳ぐらい若く見える。 たい平師匠も12月には52歳、 歌丸師匠は102歳(笑)、若く見える。 落語を楽しむポイントは二つ、面白 いと思ったら素直に大きな声で笑う、つまらないと思ってもどうにか笑う。

 2月いっぱい禁酒をした。 一番、月が短いから。 酒飲みの癖、三上戸と いう。 笑い上戸。 ウッフッフ、家のかみさん、ウッフッフ、女なんだよ。  ニワトリ上戸。 もうケッコー、コケッコー、見たことがない、落語は嘘をつ く。 壁塗り上戸。 (言い間違えて)いいんです、昇太の弟子だから。 居酒 屋で、よく見かけるから近所の人? 丁字路を左に曲がって三軒目が私ん家。  それは私ん家だ、表へ出ろと喧嘩になる。 親方、止めなくていいの。 いい んですよ、あれは親子だから。

 若い連中で一杯やろう、特級の酒二本もらった。 あとは肴だ、はな、懐具 合を聞こう。 生憎だ。 いつも生憎じゃないか。 生憎18年、生憎が着物 着ているようなもの。 夜明けの永田町駅前。 やけに淋しい。 日中の池袋 演芸場。 もっと淋しい。 墓場。 どちらもレーエン。 幽霊。 お足がご ざいません。 俺は呑みてえ、懐はノーマネーと言ってる。 (余り受けず、 もう一回やって、二度目に拍手もらう。) 銭がない国へ行きてえが、旅費がな い。 しようがないな、見繕ってこい、払いはツケにして。 先に誰か、お燗 番を。 よっちゃん頼むよ、ひと月前に、酒断ったんだったな。 一生呑まな い。

 風呂敷いっぱいに、数の子。 高かったろ。 高えだろうな。 どうしたん だ。 まあ、いいじゃないか。 角の乾物屋、親爺が居眠りをしてた、数の子 に風呂敷を掛けて、大根二本くれって、言ったんだ。 親爺が、大根なら前の 八百屋だっていうから、わしづかみにして、懐に入れた。 しようがないな、 訳話して、金を払わせてもらうようにするから。 タラの干物。 高かったろ。  タラ、値段もタラだ、罪を分かち合おう。 角の乾物屋で、タラの干物二本取 って、一本を肩に担いだ。 一本出して、いくら? 一円だって言うから、七 十銭にまけてよ、隣町で七十銭だった。 品物がちがう、って言うから、一本 背負って帰って来た。 訳話して、金を払わせてもらうようにするから。 カ ツ節が二本。 町内のガキが鬼ごっこをして遊んでいる中に、乾物屋の倅がい た。 仲間に入れろ、鬼をやるから、太いカツ節を二本持って来いって言った んだ。

 与太郎か。 お味噌を持って来た。 どこから? 拾って来た、裏の原っぱ で。 そりゃ違うもんだ、味噌じゃない。 新聞でくるんで来た。 見せろ。  (割り箸でつついて、臭いを嗅ぐ) 味噌だ。 原っぱのどこにあった。 自 転車の荷台に。 角の乾物屋の自転車。

 七輪に、火は熾きているか? 三、四十分やっているんだが、熾きない。 細 い木、新聞紙、消し炭はあるのか。 ある。 火種は? 火種って、なんだい?  タラの干物は? 水につけてある。 数の子は? 摺り下ろした。 カツ節の 出汁は取れたか? ザルにいっぱい、取れた。 これは、出し殻だ。 湯は、 どうした? きれいなんで、半分取って顔を洗った。 あと半分は、フンドシ をつけたところだ、昔から言う「♪かつお風味のフンドシ」って。 お燗番が、 ベロベロだ。 お前、一生呑まないんじゃないのか? 一升じゃない、二升そ っくり呑んだ。

桂やまとの「百川」2017/03/02 06:27

 桂やまとは才賀の弟子、薄茶の着物に、濃茶の羽織、春は花粉、夏は祭、師 匠の才賀の家は稲荷町、通った高校も、下谷神社の近くだった、と「四神剣」 「四神旗」が町内持ち回りだった話から始めた。 ちょっくら、ごめんくだせ えやし。 誰か、いないか。 誰もいなくて、主が応対。 葭町の千束(ちづ か)屋から参りやした。 奉公は初めて。 名前は? 百兵衛といいやす。 そ れはいい、ウチは百川、縁ものだ。 洗い方の手伝いや、岡持持って出前でも、 やってもらうことにするか。 今日は? 座って、見ていてくれ。 ヘェーー ーイ。 誰かいないのかい、二階で手だ。 髪結さんが来て、女中がみんな髪 を解いてしまった。 ヘェーーーイ。 百兵衛さん、羽織着ているから丁度い い、二階のお客さんの御用向きを聞いてきてくれ。 魚河岸の若い方たちだ、 丁寧に聞いてくれよ。

 バチバチバチバチ(手を叩く)。 ウッヒャッ。 バチバチバチバチ。 ウッ ヒャッ。 妙な野郎が上がって来たぞ。 わしゃ、しじんけのかきゃあにんで、 百兵衛と申します。 しじんけの申されるには、御用向きをうかがってくるよ うにとのことでして。 アッ、そうですか、そのことでわざわざ…、ごもっと もで。

 何なんだよ、あいつ。 四神剣の掛け合い人だそうだ、隣町から来たんだよ、 四神剣を質に入れたの知ってるんだ。

 そのことで只今集まって、相談をしてますんで、あと四、五人参りますので、 相談がまとまりましたら、またご挨拶を致します。 あっしは河岸の初五郎と 申します、あなた様のお顔は決して潰しませんから、手打ちじゃないが、まあ、 一杯。 こうだなつまんない顔だけんども、つぶさねえように願いてえ。 ご 酒はやらない、じゃあ甘いものでも。 くわいのキントンを、お出しして。 小 皿だ、小皿、箸をなめるんじゃない、なめるんなら横になめろ、縦になめてゲ ーゲーするな。 これはあんでげすか。 餡じゃない。 あんちゅうもので?  くわいのキントンだ。 くわいでげすか、野郎うまいこと化けやがったな。 あ っしらの具合を、お呑み込み頂いて。 こんなデカイものを、呑み込むんです か。 そうかねえ、やってみるかねえ。 アッ!ウッ! (目をパチパチして) 呑み込みやした。 改めてご挨拶を致しますんで、今日のところはお引き取り を。

 何、あれ。 四神剣って、言っていたな、六ちゃん。 言ってたよ、四神剣 って、言った時は、ダメかと思ったよ。 あれは何の何某という立派な親分に 違いない。 そうかい? 口で言わねえで、体で示そうと、呑み込んで見せた んだよ。 こうだなつまんない顔だけんども、つぶさねえように願いてえ、っ て釘を刺したんだ。

 何だ、苦しそうじゃないか、くわいのキントンを吞み込んだのか、河岸の若 い方たちがいたずらをしたんだ。 バチバチバチバチ。 ウッヒャッ。 御用 を伺わなければ、なんねえ。 あんた、もしかして奉公人かい。 四神剣の掛 け合い人じゃなくて、主人家の抱え人だよ。 長谷川町の三光新道に、常磐津 の亀文字という名高いのがいるから、呼んで来てくれ。 先生ですか? 先生 じゃなくて、師匠だ。 箱(三味線箱)も、持ってきてくれ。

 ここは長谷川町の三光新道? そうだよ。 ここで「か」のつく名高い人は?  鴨地先生だろう、鴨地源仁。 そうでがす。

 どーーれ! 河岸の若い方が、今朝がけに四、五人来られまして。 何、河 岸の若い者が四、五人、袈裟懸けに斬られた? すぐにお見舞い申す、薬籠を 持って行け、焼酎に、晒を二反、鶏卵二十個を用意しておくように。

 行って来ました、先生、すぐにお見舞い申すって。 箱を持って来たか? 小 さいな。 三味線、九つ折りだろう。 怪我人はどこか? 先生は呼んでない。  わしの薬籠が来ておるだろう。 馬鹿、抜作! ウッヒャッ、どのくらい抜け てますか? てめえなんか、一から十まで抜けてらあ。 カメモジとカモジ…、 たんとじゃあない、たった一字だけだ。

 桂やまと、大ネタの「百川」を調子よくまとめて、上々の高座だった。 前 座が脱いだ羽織を片付けたら、裏がすごく派手な赤だったのも、さらにインパ クトを加えた。

柳家小満んの「夢金」2017/03/03 06:36

 人間欲を捨てろというけれど、この世は欲の地獄。 赤ちゃんが、おっぱい を飲む、片手で乳を押えているのが、欲の始まり。 <欲深き人の心と降る雪 は、積もるにつれて道を失う>

 百両欲しい! 熊が寝言を言っている、婆さん、表はどうした。 閉めたよ。  おい、ここを開けろ。 臆病窓を開けて見る。 若いご婦人連れのお武家。 雪 は豊年の貢というが、こう降ってはな。 侍は三十二、三、一癖のありそうな、 衿垢で黒羽二重が垢羽二重の黒紋付、刀を落し差しにして、下駄履き。 娘は 品のいい美人で十七、八、文金高島田、友禅模様の着物に長羽織、ぽっくりを 履いている。 妹と猿若町で芝居見物の帰り、深川まで屋根船をやってもらい たい。 すっかり出払っておりまして。 何とかならぬか。 百両欲しい!  あれは船頭か。 船頭には違いないが、欲深い野郎で、寝言でもあんなことを 言っている、お得意以外出さないんで。 それは面白い、起してくれ。

 目を覚ませ、熊、仕事だ。 雪腹に疝気で、腰が突っ張って、駄目です。 そ こを枉(ま)げて行ってくれぬか、骨折り酒手は、多分に遣わす。 魚心あれ ば水心、行きます、行きます、酒手はあっしの合薬で。

 二竿、三竿、艪に替えて、大川に出る。 おお、寒い、雪で喜んでいるのは、 風流人と狆ころばかりだ。 枯れ枝に、花が咲いたようだぜ。

 覗いてやろう、女は寝てやらあ、野郎、穴のあくほど見てるぜ、妹じゃない な。 船をゆすってやろう、出すもの、出さないと。 疲れたろう、中に入っ て、一杯やれ。 楽しみにしていました。 一服やらんか。 酒手じゃないん で、あっしは山谷堀で欲の熊蔵と言われている。 金儲けの相談だ、艫へ出ろ。  拙者、娘が花川戸で持病の癪を起したのを、助けて連れて来た。 百両足らず 持っている、本所あたりの問屋の娘で、店の若い者とのいい仲になり家出した らしい。 謀(たばか)んで、連れ込んだ。 人殺しの手伝いいたせ、出来な ければ、その方から斬る。 手伝います、いくらくれます。 首尾よくいけば、 二両。 ただのリャンコかい、船をひっくり返すぞ。 拙者、水練の心得がな い、しからば半ば、山分けとしよう。

 両国の橋の先へ、中洲がある。 舟では証拠が残る、水葬礼といきましょう。  旦那、上がってくんねえ。 侍が上がると、竿をつく、川の真ん中へ出た。  謀ったな。 潮が満ちて、侍が、弔いにかわるんだよ。

 本所のこれこれというお宅へ、連れ戻した。 正直な船頭さん。 ごたつい ているが、一杯召し上がれ。 これは、ほんの酒手、店に届ける。 主が撥ね るから、わたしがもらいます。 身祝いの二百両、切餅切って、渡す。 二百 両! 二百両! 熊、静かにしないかい。 アーーッ、夢だった。

古今亭志ん輔の「火焔太鼓」(前半)2017/03/04 06:33

 上を向いて、ヘラヘラと出てくる。 男がいて、女がいる。 いつもパーパ ー、パーパーしゃべっている芸種だから、もてるんでしょうね、と言われるけ れど、お客様の方が長(た)けている。 軽い男がいる、200メートル行かな いうちに、次の女を口説いている。 腹の底から、ああなりたいと思う。 最 近、突然、女が寄ってきて、ドキッとするのは、私だけでしょうか、ぶっ殺さ れるから…。

 浅草演芸ホールの楽屋で、志ん朝と小せんが愚痴っていた。 小せんが、木 戸を出ると、女の人が寄って来て、できたら御飯一緒して頂けませんか、って 言われた。 初めての方だから、遠慮します。 牛(ぎゅう)は、お嫌い。 い つもトン(豚)だから、ぐらぐら揺らいだ。 吉野家へ連れて行かれた、人間 欲を捨てなきゃあ。 その話を聞いていた志ん朝が木戸を出ると、女の人が寄 って来て、ランチをご一緒にいかが、と来た。 嬉しいけれど、やめときまし ょう。 牛は、お嫌い。 牛といっても、いろんな形がある。 ブロック状の ものを鉄板で焼いて、ナイフでサイコロに切ってくれるのもあれば、部位の違 うものを、たまねぎ、こんにゃくと煮込んで、これも牛。 銀座のステーキを。  それで、割り勘という怖い目に合った。

 所帯を持つと、こんなはずじゃなかった、ということがある。 言っときま すが、ウチじゃない、世間一般の話で…。 お前さん、また客を逃がして。 い い箪笥だねって言ったのに、いい箪笥です、ウチに十八年ありますって。 抽 斗がなかなか開かなくて、すぐ開く位ならとっくに売れてますって。 それな のに売らなくもいいものを、売っちゃう。 前の米屋の主に、火鉢を売っちゃ った。 米屋さんが言ってたよ、しょっちゅう当りに来るから、火鉢と甚兵衛 さん夫婦を一緒に買ったようだって。

 市、行ったんだろ、何、買って来たの。 太鼓だよ。 太鼓なんて、際物っ て言うんだよ、初午前とかじゃないと売れないよ。 どんな太鼓か、見せてご らん。 穏やかに話をしようよ。 穏やかになんかしていたら、死んじゃうよ、 早く見せな。 汚い太鼓だね。 時代がついているんだ。 古い物で、お前さ んが失敗したのは、清盛の尿瓶、義経の金剛杖、助六の鉢巻。 いくらで、買 ったの。 うるせえな、穏やかに言え。 一分だ。 アーーアッ。 だって一 分なんだもの。 お前さん、それでも玄人かい。

 貞、表へ持って行って、ホコリをはたけ。 おじさん、この太鼓、汚いな。  はたくんだよ。 ズンズンズンズン、ズンズンズンズン。 たたくんじゃない よ。 たたいてないよ、はたいてんの、まわりの飾りをはたくと、音がするん だよ、見てて。 ズンズンズンズン。 まだ、やってんな。

 許せよ、今太鼓を叩いていたのは、お前の家か。 殿がお駕籠でお通りにな ってな。 あれがやりました、親類から預かっているんですが、バカでして、 バカな目をしているでしょう、バカ目といいます、十三で。 殿が太鼓を見た いとおっしゃっている。 あれが叩きました、よく働くんです、賢そうな顔を しているでしょう、もう十六で。 十三じゃないのか、そんなことはどうだっ ていい、屋敷に見せに来てくれ。 どちらのお屋敷で…、存じ上げております。

 ほら見ろ、お屋敷でお買い上げだ。 お殿様は、駕籠ん中で、音聞いただけ だろ、お殿様がすすの塊を見たら、かかるむさいものを持ってきよってと、大 きな松の木にぐるぐる巻きにされて、水をかけられて、鞭でビシビシ、大きな 蜘蛛に、蛇がニョロニョロ、行っといで。 ちょっと、見せに行くんだ。 商 売気を出すな、一分で売っちゃいな。 ここで売らなきゃあ、太鼓は箪笥を抜 くよ。 俺は半人前だ、馬鹿が太鼓背負っているってことを、忘れるんじゃな いよ。

古今亭志ん輔の「火焔太鼓」(後半)2017/03/05 06:49

 道具屋か、通ってよい。 きれいな庭だな、手入れが行き届いている、大き な松だな(と、見上げて、カカアの怖い話を思い出す)。 逃げちゃおうかな、 逃げ足には自信がある。 儂(わし)だ、儂だ、上がれ。 いいです、ここで、 逃げやすいから。 上がれ、夫婦喧嘩でもしたか。 この太鼓か、時代がつい ておるな。 みんな時代みたいなもので、踏んだら危ない。 地雷か。 見せ に来ただけですから。 むさいもの、と聞いたら、パパーッと逃げちゃおう。

 殿には、お気に召して、お買い上げだ。 いくらだ? いくらかな。 いく ら? いくらぐらいでしょう。 殿には不忠に当たるが、手一杯に申せ。 十 万両。 エッ。 まけますよ、一晩中でもまけます。 三百金ではどうだ。 何?  小判で三百枚。 サーンービャークーリョーウーッ! ウリマーース。 受取を 出せ。 いりません。 こちらがいるんだ。 印形がない、爪印でよい。 そ んなに押してどうするんだ。 八十ぐらい。 真っ赤になったではないか。 こ れが五十両、これで百両だ。 飛んで行くな。 百五十両だ。 ワーッ、百五 十両、なくさないようにしないと。 五月蝿い男だな。 二百両。 泣かなく ともよい。 二百五十両だ。 すみません、水を一杯下さい。 やっかいな奴 だな、水を持って来てやれ。 これで三百両。 ありがとうございます、手前 どもでは、一度売ったものは、二度と引き取らないことになっておりまして。  ちょいと伺いますが、あんな汚い太鼓を、どうして三百両で。 拙者にもわか らんが、お上はお目が高い、火焔太鼓と申してな、世に二つとない名器だとい うことだ。 風呂敷を持っていけ。 あなたに上げます。

 道具屋が、地に足がつかないで、フワフワと飛んで参った。 商いはあった か、いくらで売れた? 大きなお世話だ。 カカアが何て言ったか、馬鹿だ、 半人前だ、一分で売っちゃえって言ったんだ。 腹いっぱい食わせて、くすぐ ってやろう。

 いま、帰えった。 一分って、言ったんだろうね。 一分、俺の商人魂が許 さない。 そんなものは、消せ。 先方は手一杯申せってんだ。 それでいく らって言ったんだい。 十万両。 ウフフン。 三百両で売れたんだよ。 わ かった、わかった、そんなこと言わなくても、ご飯は食べさせてあげるから。  あの太鼓、三百両で売ってきた。 ほんとかい、見せておくれ。 これが五十 両。 あーら、ちょいと。 これで百両だ。 古い物はいい。 百五十両だ。  お前さん、商売が上手だね。 二百両。 柱につかまれ。 二百五十両だ。 ち ょいと、水を一杯。 ここで水を飲まなきゃあ、一端(いっぱし)とは言えな い。 これで三百両。 まあ、ちょいと、儲かるねえ、音のするものに限るよ、 こんだ音のするものを買って来なよ。 半鐘を買って来よう。 半鐘はいけな いよ、おジャンになるから。