桂やまとの「百川」2017/03/02 06:27

 桂やまとは才賀の弟子、薄茶の着物に、濃茶の羽織、春は花粉、夏は祭、師 匠の才賀の家は稲荷町、通った高校も、下谷神社の近くだった、と「四神剣」 「四神旗」が町内持ち回りだった話から始めた。 ちょっくら、ごめんくだせ えやし。 誰か、いないか。 誰もいなくて、主が応対。 葭町の千束(ちづ か)屋から参りやした。 奉公は初めて。 名前は? 百兵衛といいやす。 そ れはいい、ウチは百川、縁ものだ。 洗い方の手伝いや、岡持持って出前でも、 やってもらうことにするか。 今日は? 座って、見ていてくれ。 ヘェーー ーイ。 誰かいないのかい、二階で手だ。 髪結さんが来て、女中がみんな髪 を解いてしまった。 ヘェーーーイ。 百兵衛さん、羽織着ているから丁度い い、二階のお客さんの御用向きを聞いてきてくれ。 魚河岸の若い方たちだ、 丁寧に聞いてくれよ。

 バチバチバチバチ(手を叩く)。 ウッヒャッ。 バチバチバチバチ。 ウッ ヒャッ。 妙な野郎が上がって来たぞ。 わしゃ、しじんけのかきゃあにんで、 百兵衛と申します。 しじんけの申されるには、御用向きをうかがってくるよ うにとのことでして。 アッ、そうですか、そのことでわざわざ…、ごもっと もで。

 何なんだよ、あいつ。 四神剣の掛け合い人だそうだ、隣町から来たんだよ、 四神剣を質に入れたの知ってるんだ。

 そのことで只今集まって、相談をしてますんで、あと四、五人参りますので、 相談がまとまりましたら、またご挨拶を致します。 あっしは河岸の初五郎と 申します、あなた様のお顔は決して潰しませんから、手打ちじゃないが、まあ、 一杯。 こうだなつまんない顔だけんども、つぶさねえように願いてえ。 ご 酒はやらない、じゃあ甘いものでも。 くわいのキントンを、お出しして。 小 皿だ、小皿、箸をなめるんじゃない、なめるんなら横になめろ、縦になめてゲ ーゲーするな。 これはあんでげすか。 餡じゃない。 あんちゅうもので?  くわいのキントンだ。 くわいでげすか、野郎うまいこと化けやがったな。 あ っしらの具合を、お呑み込み頂いて。 こんなデカイものを、呑み込むんです か。 そうかねえ、やってみるかねえ。 アッ!ウッ! (目をパチパチして) 呑み込みやした。 改めてご挨拶を致しますんで、今日のところはお引き取り を。

 何、あれ。 四神剣って、言っていたな、六ちゃん。 言ってたよ、四神剣 って、言った時は、ダメかと思ったよ。 あれは何の何某という立派な親分に 違いない。 そうかい? 口で言わねえで、体で示そうと、呑み込んで見せた んだよ。 こうだなつまんない顔だけんども、つぶさねえように願いてえ、っ て釘を刺したんだ。

 何だ、苦しそうじゃないか、くわいのキントンを吞み込んだのか、河岸の若 い方たちがいたずらをしたんだ。 バチバチバチバチ。 ウッヒャッ。 御用 を伺わなければ、なんねえ。 あんた、もしかして奉公人かい。 四神剣の掛 け合い人じゃなくて、主人家の抱え人だよ。 長谷川町の三光新道に、常磐津 の亀文字という名高いのがいるから、呼んで来てくれ。 先生ですか? 先生 じゃなくて、師匠だ。 箱(三味線箱)も、持ってきてくれ。

 ここは長谷川町の三光新道? そうだよ。 ここで「か」のつく名高い人は?  鴨地先生だろう、鴨地源仁。 そうでがす。

 どーーれ! 河岸の若い方が、今朝がけに四、五人来られまして。 何、河 岸の若い者が四、五人、袈裟懸けに斬られた? すぐにお見舞い申す、薬籠を 持って行け、焼酎に、晒を二反、鶏卵二十個を用意しておくように。

 行って来ました、先生、すぐにお見舞い申すって。 箱を持って来たか? 小 さいな。 三味線、九つ折りだろう。 怪我人はどこか? 先生は呼んでない。  わしの薬籠が来ておるだろう。 馬鹿、抜作! ウッヒャッ、どのくらい抜け てますか? てめえなんか、一から十まで抜けてらあ。 カメモジとカモジ…、 たんとじゃあない、たった一字だけだ。

 桂やまと、大ネタの「百川」を調子よくまとめて、上々の高座だった。 前 座が脱いだ羽織を片付けたら、裏がすごく派手な赤だったのも、さらにインパ クトを加えた。

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