映画『シロタ家の20世紀』と世界大戦2017/04/16 06:45

12日、新宿文化センター小ホールで開かれた「ピアノ・コンサートと映画」 の会に行った。 高橋百百子さんに教えて頂いたのだ。 主催は、第一次世界 大戦100年展2018実行委員会 https://ww1jp.wordpress.com/ である。 来 年2018年は第一次世界大戦終戦100周年にあたるのだそうで、史上最大の破 壊と1600万人の国民の死をもたらした、この戦争とは何だったのか、日本は どう関わったのか、そもそも戦争とはどういうことなのか、そしてそれはどの ような影響を今日に及ぼしているのかを、先入観や民族的偏見を排し、イデオ ロギーに偏らず、史実に基づいて客観的に、国民の目線で捉え直す展覧会を企 画しているのだそうだ。 その歴史の延長線上で現代世界を見直し、世界の人々 とともに平和を目指すことを目的としている。

映画は、藤原智子監督作品『シロタ家の20世紀』(2008年)。 北朝鮮の度 重なるミサイル発射や核実験の準備に、トランプ大統領のアメリカは軍事力行 使の可能性もほのめかしていて、偶発的に戦争となる危険性をはらんでいる。  万一の場合、韓国はもちろん、日本にも戦火が及ぶ。 中国とロシアの動きに よっては、第三次世界大戦に発展することさえ懸念されるのだ。 こうした日々 のニュースに接している身にとって、まことに身につまされ、深く考えさせら れる映画なのだった。

シロタ家は、ロシア領だったウクライナのカミェニッツ・ボドルスキの出身 である。 ここにはかつて多くのユダヤ人が住んでいたが、ロシア革命など度 重なるユダヤ人迫害と第二次世界大戦中のホロコーストによって、今はかつて の8割がいなくなった。 ユダヤ人のシロタ一族は19世紀末、迫害を逃れキ エフに移った。 5人の兄弟姉妹は、みな芸術を志し、音楽学校を優秀な成績 で卒業すると、兄ヴィクトルはワルシャワに、レオはウィーンに、弟ピエール はパリに出て、大都会で活躍する。

レオ・シロタは、全ヨーロッパの楽壇で世界的ピアニストとして演奏会を展 開、1929年から日本で17年間、ピアニストの育成と演奏活動で、日本の楽壇 に貢献する。 レオが育てたピアニストには、豊増昇、永井進、水谷達夫、園 田高弘、黒田睦子、藤田晴子、松隈陽子、田中園子、星野すみれなどがいて、 料理研究家になった王馬熙純も教え子だ。 レオの一人娘ベアテは、戦時中ア メリカに留学、戦後日本で両親と再会、GHQで新憲法の草案に関わって、男 女平等の条文(24条)を書いた。

ヨーロッパに残った兄弟は、ナチスの台頭と第二次世界大戦で、悲劇的な最 期をとげる。 兄ヴィクトルはポーランドのワルシャワで政治犯として行方不 明になり、その息子ピエールはノルマンディー上陸作戦で戦死。 パリで音楽 プロデューサーとして活躍していたピエールは、アウシュビッツに連行され、 命を落とした。 戦争と迫害の20世紀の縮図ともいえる、シロタ家の人々の 悲運を、映画は雄弁に描き出している。

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