自註『本井 英集』を読む(序)2017/05/16 07:12

 先月末『夏潮』5月号と同じ便で、自註現代俳句シリーズ・12期10『本井 英 集』(公益社団法人俳人協会刊)をご恵贈頂いた。 本井英先生が、句作を始め た慶應義塾高校3年生だった昭和38(1963)年から、昨平成28(2016)年ま で、半世紀を超えて240冊の句帖に書き付けたおよそ12万句の中から、300 句を自選し、自註を付したものである。

 私は平成16(2004)年10月23日に、慶應志木高同窓会「志木会」の俳句 の会「枇杷の会」小江戸川越吟行でご指導頂いたのが、本井先生との初対面だ った。 平成18(2006)年3月いっぱいで志木高を退職され、8月逗子のご自 宅で開かれた「日盛会」に参加し、翌年8月主宰創刊された『夏潮』に入会、 少し編集をお手伝いした。 だから、このご本の前半分の俳句は、私の知らな い時期のもので、自註によって、俳句に関わられた事情、ご家族のことなど、 いろいろなことがわかったのであった。

 <十月の匂ひといふがありにけり> 昭和40年作(大学2年か) 「母と 一緒に星野立子先生の句会に出る機会もあった。母は地味だが誠実な句を詠ん だ。私の句は気分ばかりだった。この句なども。」

 <網戸抜け行ける煙草の煙かな> 昭和42年作(大学4年) 「写生とい うことが、少し解りかけた句。煙草の煙の濃淡が、そのままの形で「網戸」を 通過する。花鳥諷詠の俳句は上手くなるのに時間がかかる。」

 <春潮に渡つてみたき一つ島> 昭和61年作 「「一つ島」は初島。若い時 分、敢えて抑えていた叙情性といったものが作句に少し滲みはじめた時期。」

 <寒木瓜(ぼけ)の蕾むむむと赤きかな> 平成元年作 「「むむむと」が少 し自慢だった。「寒木瓜の蕾」の充実した感じを表せたように思えた。さて今に して思うと、そこが目立ってしまう。」

<土用浪一角崩れ総崩れ> 平成3年作 「めらめらと盛り上がった「土用 波」。ある場所が崩れると、連鎖的に崩れる。中七・下五の調子が良すぎて、い ま見るとやや「軽薄」である。」

このように、いくつか拾うと、「今にして思うと」「いま見ると」と、現在あ る高い句境にまで到達しておられることが、推察できる。 先日の「枇杷の会」 深川吟行後の小酌で、はっきりしたものをつかんだ、それを書いて死にたい、 というようなことをおっしゃっていた。 それで最近の句会での選評や説明が くどいだろう、と。

私などより若いのに、「死」を考えておられるのに驚いたが、こんな自句自註 もあった。

<そこいらに黄泉の入口里若葉> 平成17年作 「しきりに妻のことを思 い出したり、「死ぬ」ことを考えるのは、逆に生き抜こうとする内奥からの欲求 とせめぎ合っていたのだと、今は思う。」

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