無言館とゲティスバーグ演説2017/05/19 07:09

 本井英先生は「枇杷の会」深川吟行後の小酌で、はっきりしたものをつかん だ、それを書いて死にたい、というようなことのほかに、先の戦争で死んだ人々 に申し訳ないという気持が強いとも、おっしゃった。 先生は昭和20年終戦 の年のお生れだ。 私は昭和16年に生れ、品川中延で空襲に遭い、父に負ぶ われて逃げ、立会川に下りて一夜を過ごした経験があるのだけれど、まったく そういう気持がない、と申し上げた。 能天気なのだろう。

自註『本井 英集』に、こんな句がある。 <炎天のかむさるばかり無言館> 平成16年作 「信州上田。塩田平の一 角に「無言館」はある。あの戦争に出陣した画学生達の作品や遺品が展示して ある。空は彼の日々と同じ「炎天」。」

 5月15日は福澤先生ウェーランド経済書講述記念日の講演会、旧図書館の改 修工事で福沢先生の胸像がその前に移設された三田演説館で、阿川尚之慶應義 塾大学名誉教授の「福澤先生の訳した憲法 : 合衆国という国のかたち」を聴い てきた。 素晴らしい講演だった。 阿川尚之さんはまず、福沢が『西洋事情』 (初編)巻之二で訳したアメリカ合衆国憲法を通して、その思想と仕組みを考 える。 福沢が訪れたアメリカは、南北戦争の直前と直後だった。 帰国後は 幕末維新の動乱だ。 日米両国はそれぞれ、「国のかたち」の大きな変化に直面 していた。 その大きな変化と憲法制定・改正の関係に議論を進めた。

 阿川さんは結論の部分で、「国のかたち」の変化における学者、思想家の役割 に触れ、「国のかたち」を示した人として、福沢諭吉とエイブラハム・リンカー ンを挙げた。 福沢は欧米の立憲君主制、共和制を紹介し、独立する個人から なる、将来あるべき日本の「国のかたち」を構想した。 『瘠我慢の説』「立国 は私なり、公に非(あら)ざるなり」。 それはリンカーン大統領の「国のかた ち」に関する思想と対比することができ、共通性を持っている。 阿川尚之さ んは、まさに演説館にふさわしいからと、リンカーンの「ゲティスバーグ演説」 “a new birth of freedom”の訳文と原文の朗読で、講演を締めくくった。 

 帰宅後、アメリカンセンターJAPANのウェブサイトで「ゲティスバーグ演 説(1863年)」を読む。 南北戦争でのゲティスバーグの戦いは1863年7月1 日から3日まで、南部連合軍はリー将軍の北バージニア軍を先頭に合衆国の領 土を侵略し、ミード将軍率いる合衆国ポトマック軍と戦った。 双方で4万5 千人以上の死傷者を出した悲惨な戦闘の結果、4日南部連合軍はバージニアに 撤退、これが南北戦争の転換点になったといわれる。 リンカーンの演説は、 1863年11月19日、ゲティスバーグ国立戦没者墓地の開所式で行われた。

 全体でわずか2分ほどの演説だが、米国史上最も重要な演説の一つとみなさ れている。 「アメリカ合衆国が拠って立つ自由と平等の原則を表現すること に成功している。そして米国の生存のために戦い、命を落とした人々の栄誉を 誇らかに称えている。リンカーンは演説の中で、米国のための「自由の新たな 誕生」に言及した。」

 ゲティスバーグ演説 「87年前、われわれの父祖たちは、自由の精神にはぐ くまれ、人はみな平等に創られているという信条にささげられた新しい国家を、 この大陸に誕生させた。今われわれは、一大内戦のさなかにあり、戦うことに より、自由の精神をはぐくみ、平等の信条にささげられた、このような国家が、 長く存続することは可能なのかどうかを試しているわけである。われわれはそ のような戦争の一大激戦の地で、相会している。われわれはこの国家が生き永 らえるようにと、ここで生命を捧げた人々の最後の安息の場所として、この戦 場の一部をささげるためにやって来た。」(中略)

「彼らがここで成した事を決して忘れ去ることはできない。ここで戦った 人々が気高くもここまで勇敢に推し進めてきた未完の事業にここでささげるべ きは、むしろ生きているわれわれなのである。われわれの目の前に残された偉 大な事業にここで身をささげるべきは、むしろわれわれ自身なのである。それ は、名誉ある戦死者たちが、最後の全力を尽くして身命をささげた偉大な大義 に対して、彼らの後を受け継いで、われわれが一層の献身を決意することであ り、これらの戦死者の死を決して無駄にしないために、この国に、神の下で、 自由の新しい誕生を迎えさせるために、そして、人民の人民による人民のため の政治を地上から決して絶滅させないために、われわれがここで固く決意する ことである。」

It is for us the living, rather, to be dedicated here to the unfinished work which they who fought here have thus far so nobly advanced. It is rather for us to be here dedicated to the great task remaining before us – that from these honored dead we take increased devotion to that cause for which they gave the last full measure of devotion – that we here highly resolve that these dead shall not have died in vain – that this nation, under God, shall have a new birth of freedom – and that government of the people, by the people, for the people, shall not perish from the earth.

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