オマーン大使館で天満敦子のヴァイオリンを聴く2017/05/21 06:48

 まずクイズから始めたい。 (1)いつか来たこの道に、咲いていた花の名 と垂れていた枝は何ですか? (2)城ヶ島の磯に降る雨の色は、何色ですか?  (3)からたちが秋に実って出来るものは? (4)𠮟られて、あの子とこの子 は、何をさせられましたか?

 16日、広尾の駐日オマーン・スルタン国大使館で開かれた天満敦子ヴァイオ リンリサイタルを聴いた。 千代田キワニスクラブ主催のチャリティーコンサ ートである。 家内の友人からこのコンサートの話が来た時、二つ返事で「天 満敦子さんなら行く行く」と言った。 以前、藤原一枝さん主宰のホモ・ルー デンスの会のカザルス・ホールで、天満敦子さんのヴァイオリンを聴く機会が 何度かあって、これはすごいと思った。 音痴にも、本当に良いものは、わか るらしいのだ。

 広尾は、結婚当初住んだ懐かしい町である。 駐日オマーン国大使館への道 の一本上、日本赤十字社医療センターの方へ上がって行く道は、生まれたばか りの息子を乳母車に乗せて、よく散歩した道である。 大使館は立派な建物だ った。 チケットの他に身分証明書をと言われていたが、警備担当者の簡単な 荷物検査もあった。 会場は男子禁制かと思われるほど、女性ばかりだった。  キワニスクラブのキワニスは「皆で集まろう」の意味、79か国に20万人の会 員のいる国際的な社会福祉団体で、千代田キワニスクラブは「子供の貧困」を テーマに活動し、破傷風撲滅のワクチンへの支援もしているという。

 天満敦子さんのヴァイオリン演奏は、期待通りだった。 前半は、バッハ「ア ダージョ」、シューマン「トロイメライ」、マスネ「タイスの瞑想曲」、ドヴォル ザーク「ユーモレスク」、ブロッホ「祈り」、イギリス民謡「グリーンスリーヴ ズ」、フォスター「スワニー河」、そして天満敦子さんの看板であるポルムベス ク「望郷のバラード」。

 天満敦子さんは中間のショート・トークで、1992年にルーマニアで「望郷の バラード」と運命の出会いをしてから、今年で25年、1735年製アントニオ・ ストラディヴァリウスと結婚してから30年、パール婚だと語った。 このス トラディヴァリウスはイタリア人だけれど、日本の曲でも素敵な音を出す、毎 度、発見と熱愛があるので、聴いて欲しい。 入口のチャリティーの箱、寝て いたのを立てておいたので、ご協力を、なるべく紙の方で、と。

 後半は、和田薫「独奏ヴァイオリンのための譚歌より<漆黒・萌黄>」、山田 耕筰・梁田貞/竹内邦光編曲「この道・城ヶ島の雨」、山田耕筰「からたちの花」、 弘田龍太郎「𠮟られて」、菅野よう子「花は咲く」、ホルスト「ジュピター」。

 「望郷のバラード」を始めとする前半の各曲が、心に沁みてきたのはもちろ んだが、天満敦子さんの素晴らしさを実感したのは、後半の日本の曲だった。  日本の曲では、ヴァイオリンの弦にゴムのようなものを挟んだが、チューブと いうらしい、音色を穏やかに変えるのだろうか。 アンコールに贅沢な伴奏で 皆で歌った「故郷」を含め、幼い時に母がよく歌っており、憶えていた曲ばか りだったので、あやうく涙がこぼれそうになった。 弦をはじくピチカートを 織り交ぜた「花は咲く」には、東北の被災地のことが頭に浮かび、感情を揺さ ぶられる。

 クイズの答、(1)あかしあの花・山査子の枝、(2)利休鼠、(3)まろいまろ い金のたまだよ、(4)あの子は、町までお使いに・この子は、坊やをねんねし な。 作詞は「この道」「城ヶ島の雨」「からたちの花」が北原白秋、「𠮟られて」 は清水かつら。