「雨蛙」と「石榴の花」の句会2017/06/12 07:06

 6月8日は、『夏潮』渋谷句会。 このところ入門の吟行句会であるタイドプ ール句会から、兼題の渋谷句会にも参加する方がいて、男女ほぼ半々、女性が 圧倒的に多い夏潮会にあって、異色の句会となりつつあるのは、心強く嬉しい ことである。 兼題は「雨蛙」と「石榴(ざくろ)の花」、私はつぎの七句を出 した。

雨蛙跳んでペタリと手の甲に

庭へ放つ鮒釣で得し雨蛙

雨蛙けふは三軒先で啼き

雨蛙啼けばにはかにかき曇り

お茶淹れる役たりし頃花石榴

帝釈天井戸端に散る花石榴

人住まぬ平屋の庭に花石榴

 私が選句したのは、つぎの七句。

一雨の来さうな風や枝蛙     なな

濡縁にいつしかをりぬ雨蛙    盛夫

青蛙気付けばここにまたここに  明雀

雨蛙かしこまりたる姿して    盛夫

干し物に残る湿り気花石榴    さえ

曇天に朱のてらてらと花ざくろ  さえ

ささくれし格子の棧や花石榴   さえ

 私の結果は、<雨蛙跳んでペタリと手の甲に>を英主宰、<庭へ放つ鮒釣で 得し雨蛙>と<雨蛙啼けばにはかにかき曇り>を耕一さん、<お茶淹れる役た りし頃花石榴>を英主宰と正紀さん、<帝釈天井戸端に散る花石榴>をななさ んが、採ってくれて、主宰選2句、互選4票、計6票とまずまずだった。

 主宰の選評。 <雨蛙跳んでペタリと手の甲に>…こんなこともあるんです ね。雨蛙を手にした感触、誰もが一度は経験したことがあるのではないか。リ ズムよく出来ている。 <お茶淹れる役たりし頃花石榴>…NHK朝の連続ド ラマか何かにありそう。小さな作業所に就職して、社会生活が始まった。町工 場のような所に、年端の行かない娘さんが勤めて、初々しい経験をする。そん な、けっこう饒舌な句であったか。

 実は、作者の私は「石榴の花」を「紅一点」、万緑叢中紅一点を念頭に、いさ さか理屈に流れるかもしれないとは思いながら詠んだのだった。 本井英主宰 の思いがけない読みのお蔭で、俄然素敵な句にして頂いた。 この句会には、 主宰選になった<工場の中庭に咲く花石榴>という明雀さんの句もあった。  実は私、十数年前までガラス食器を製造する零細町工場をやっていて、中庭に は父の植えた石榴が毎年咲き、大きな実をつけていた。 田舎から集団就職で 来た中卒がベテランの職人に育ち、伝手を頼って高卒の事務員も受け入れたことがあった。 主宰の読みがピタリとはまるような娘さんもいたのである。