日本のメディアに不足する地政学の観点2017/06/26 07:13

 「オリエント急行」の講演をして頂いた沼田篤良さんと事前の打ち合わせで お会いした時、豊富なご経験から、いろいろなお話を聞いた。 現在のテレビ 界のお寒い状態、きな臭い世界情勢に関して、戦争と鉄道の歴史、日本と世界 の政治家の文化度などなど。 こんなエピソードもあった。 歴史をひもとけ ば、ナポレオンが全ヨーロッパの制覇を図り、大陸封鎖してイギリスに対抗、 大陸封鎖令に従わぬロシア帝国を屈服させようとモスクワ遠征を行うが、夏服 で攻め糧食も不足、厳冬の到来を恐れて退却した。 トンネルを掘ってイギリ スを大陸に繋げてしまおうと、トンネルを初めて掘ったのはナポレオン、ドー ヴァー海峡が無ければイギリス等という国はとうに無くなっていただろう。  いや、そもそもイギリスという国は出来なかっただろう。 海峡が無ければ、 第二次大戦でドイツにやられていた。 フジテレビのパリ支局長時代に、ユー ロトンネルが出来て、史上初めてイギリスは大陸と繋がった。 開通の儀式で の英仏首脳の表情には興味深いものがあった。 ミッテラン大統領は「やっ た!」「遂にブリテン島をContinentに繋げたぞ!」と言わんばかりの表情だ ったが、エリザベス女王は浮かぬ顔をしていた。

 その後のメールで、私は沼田さんに講演の題を『オリエント急行と地政学』 としてはどうかと提案した。 たいへんに喜んでいただいて、まさにそれが言 いたかったことだ、と。 慶應義塾には人文系の学問を尊重する伝統がある。  日本のメディアが作る番組や報道するニュースは、地政学、このような歴史、 地理、文化人類学等がまるで理解出来ていないという欠点がある、と。 そし て、“-The Orient, The Occident and The World !”という副題をもらった。  「東は東、西は西」、キプリングはオリエント急行の終点トルコのコンスタンチ ノープルでボスポラス海峡を望んで、この詩を詠んだという。

6月13日の当日記「トランプ政権とは何か、日本への影響」で、ある国際ジ ャーナリストがトランプ大統領は「三つの宗教とけっこううまくやっている」 と語ったと書いたが、沼田篤良さんもトランプは初の海外外遊先として、リヤ ド(サウジアラビア)、テルアヴィヴ(イスラエル)、ヴァティカンを巡った、 つまり現代社会も旧約聖書の世界を引きずっているのだ、と指摘していた。