桂三木男の「雛鍔」2017/07/02 06:51

 6月27日は、第588回の落語研究会。 いかにも梅雨らしく蒸し暑いが、 帰りには雨が降っていなくて助かった。

「雛鍔」       桂 三木男

「蛙茶番」 朝也改メ 春風亭 三朝

「野ざらし」     橘家 圓太郎

       仲入

「熱血怪談部」    林家 彦いち

「大山詣り」     古今亭 志ん輔

 桂三木男、白い模様の入った薄青色の着物に、紺の羽織、早口で9月に真打 に昇進、祖父と叔父の三木助を継ぐ予定と。 3月に真打昇進して、この後出 る三朝(さんちょう)兄(あに)さんがいい人で、面倒見がいい、自分のもあ って忙しいのに、ひろ木兄さん(林家)の真打昇進パーティーを手伝っていた。  19歳で入門して33歳、14年、何回破門と言われたろう、見習いの半年、酒は 禁止と言われて呑まなかった。 師匠(馬生)が浅草演芸ホールに出ていて、 近くの蕎麦屋で日本酒を二合頼む、師匠は酒好きだが量は呑まない、お前も呑 みなさいと言われた、それで呑んだのが最初。 温厚な師匠で…。 大師匠の 先代馬生も温厚、トリを取っていた楽屋で前座が三人、ギャンブルをして、勝 った負けたとやっていた。 ドロドロと、追い出しの太鼓が鳴った。 誰が叩 いたか…、先代が叩いていた。

 早かったね、仕事の方はどうだった。 やんなっちゃったんだ、松の木に登 ってちょっと一服していたら、お屋敷の若様がお通りになるから降りろと言わ れて、池の脇で一服していた。 可愛らしい紋付き袴で、若様が若侍に取り囲 まれてやってきて、銭(ぜに)を見つけた。 田中さんに、爺、これは何じゃ。  おおように育っている。 田中さんは流石、若様はいったい何だと思し召しま すか。 丸くて四角い穴が開いている、裏に波の模様、お雛様の刀の鍔ではな いか。 不浄な物なので、お捨てを。

 田中さんに、利発な若様ですね、おいくつで、と聞いた。 お八歳になられ る。 お八歳、来年はオクサイで。 金坊と同い年だ。 金坊はいつも銭くれ、 銭くれって言って、金の亡者だ。 どうしてここまで違うのかと思うと、やん なっちゃってな、帰って来た。 お前さん、若様には若侍なんかがいて遊んで くれる、金坊は遊んでくれる人がいないから、銭に遊んでもらっているような もんなんだよ。 俺は、子供らしい上品な心を持ってもらいたいんだ。

 金坊はどうした。 後ろで、聞いているよ。 お屋敷の若様は、銭をお雛様 の刀の鍔じゃないかと言ったんだ、お前にそんなことが言えるか。 そこに銭 を落しな。 何を! 銭、おくれよ。 やらない。 銭、おくれよ。 やらな い。 おっ母さんが上げるよ、遊んでおいで。 お屋敷みたいに、おおように 育てるんだ。

 ごめんよ。 お店の旦那で。 話があって来た。 こないだ啖呵切ったそう だね、こんな店はこちらから出入り止めだ、と。 あれは私がいけなかったん だ、庭の植木の入れ替えに、つい気が急いてしまって、番頭が知っている植木 屋があるというから頼んじまった。 その職人の仕事を、お前さんが見た。 す まなかったね。 頭を上げて下さい。 一杯やってお店の前を通ったんで、あ んなことを言っちまった、帰って酔いが醒めたら、しまった親父の代からのお 得意様、謝りに行かなきゃあと思ったが、つい行きそびれて、すみません、こ ちらの方こそ、もう一度仕事をさせて下さい。

 お茶出せ、羊羹を出せ。 こんなの拾っちゃった、丸くて四角い穴が開いて いる、裏に波の模様、お雛様の刀の鍔だと思うんだけど。 親方、お宅のお坊 っちゃんか、お金を知らないようだな。 ウチにもあれぐらいの孫がいるが、 いつもジージ御足をだ。 坊や、こっちへおいで。 これでもって好きなもの を買って、いや、この子の手習いの道具一式持って来て上げるから。  金坊、まだ持っているのか、そんな丸い物はうっちゃっちゃえ、不浄な物だ から…。 やだい、これで焼芋買って食うんだから。

 三木男の「雛鍔」、硬くなっていたのだろうか、あまり感心しなかった。