NHK開発の「社会問題解決型AI(人工知能)」と「計量経済学」2017/07/30 06:56

 NHKスペシャル「AIに聞いてみた どうすんのよ!? ニッポン」(7月22 日放送)を見た。 NHKが「社会問題解決型AI(人工知能)」を開発し、5000 種類、700万件を超える日本の経済、社会、医療、インフラなどのあらゆるデ ータ、さらに1万5千人の人生を10年にわたって追跡した行動パターンや価 値観のデータを投入し、パターン認識とディープラーニングという手法を使っ て、解析を試みた。 目指したのは、あるデータの値(たとえば年齢の人口の 増減)が変化することによって、他のデータの値(たとえば自殺率や貧困率) が連動してどのように変化するか、関係を可視化するAIだ。 しかし、AIが 可視化して見せるのは「Aが増えると、Bも増える傾向にある」といったパタ ーンだけで、その理由や因果関係までは教えてくれない。 その読み解きは、 われわれ人間がする必要が出てくる。

 私がなぜこの番組に興味を持ったか。 一つには、Nスペ「人工知能 天使 か悪魔か 2017」<小人閑居日記 2017.6.30.> 藤井聡太四段と人工知能(AI)の活用<小人閑居日記 2017.7.1.> を書いていたこと。

 さらに、50年以上前の学生時代、俗に「計量経済学」と呼ばれる、経済理論・ 統計学・数学を利用して、実証的な立場から数量的検証を行う経済学を勉強し たからだ。 卒論では、セメント産業の投資関数を研究した。 企業の投資行 動は、どんな要因で起こるのか、投資の大きさは、需要の増加、利潤の蓄積、 現有の設備量、他社の動向などと、相関関係が規定できるのかという投資関数 を、有価証券報告書などのデータから計算した。 初めは手回しのタイガーと いう計算機を使い、利用できるチャンスがあればフリーデンやモンローなどの 電動計算機を使った。 まだ学生が電子計算機を使えるところまで、行ってい なかった。 もちろんパソコンはまだなかった。

 AI(人工知能)の社会問題解決への応用は、当時、われわれがやっていたこ との理想的な進化の形だと思ったのだ。 ただ、上に書いたように、今回の「社 会問題解決型AI」が可視化して見せるのは「Aが増えると、Bも増える傾向に ある」といったパターンだけで、その理由や因果関係までは教えてくれない。  その読み解きは、われわれ人間がする必要があるというのだけれど、統計学的 な推論はできないのだろうかと考えた。