『食べる』で山本道子さんの講義を読む2017/09/08 07:04

5年前に、仲間内の情報交流会で「日暮れて、道遠し。日本の現状」という 話をしてもらった極東証券会長の菊池廣之さんが、『食べる』(慶應義塾大学出 版会)という本を送ってくれた。 極東証券(株)はずっと慶應義塾大学教養 センターで寄附講座「生命の教養学」を開講しているが、その2015年度(第 12回)のテーマ「食べる」についての11の講義をまとめた本である。

例年は難解なテーマなので、ちょっと敬遠しているのだが、「食べる」は私 のブログのカテゴリーにもある身近な話題だった。 手に取ってみると、何と 俳句「夏潮会」のお仲間、山本道子さん(村上開新堂代表取締役、料理研究家) の「日本人の食べ方・味わい方から見る日本の文化」という講義があるではな いか。 さっそく読ませてもらう。 全体の構成は、以下のようになっている。

1. はじめに ○ニューヨークでの体験 ○外国人対象の料理コンテスト  ○昔からつながる何かを読み取る

2. 「箸で食べる」ということ

3. 口中調味 ○日本人のご飯の食べ方 ○素材の「素」の味わい ○総合的 になったスパイシーさ ○日本人ならではの食べ方 ○空気を一緒に食べる

4. 気候と風土

5. 日本は水の国

6. 弁当箱と日本文化をひろげること

 山本道子さんについては、こんなことを書いてきた。

山本道子さんの講演「日本人の食と俳句」<小人閑居日記 2013. 5. 20.>

リズムと香り、水を固める、口中調味<小人閑居日記 2013. 5. 21.>

「葛水」、「久助」、トレハロース<小人閑居日記 2013. 5. 22.>

こだわりの西洋菓子「村上開新堂」<小人閑居日記 2015.5.28.>

武士からパティシエになった初代<小人閑居日記 2015.5.29.>

開新堂創業と、後継者の教育<小人閑居日記 2015.5.30.>

「村上開新堂」の味と哲学をつくった三代目<小人閑居日記 2015.5.31.>

村上開新堂・山本道子さんの作業場<小人閑居日記 2015.7.12.>

 それらに書いたことと、重ならないところを、『食べる』の講義から拾って みたい。

 山本道子さんは、ご主人が商社マンで1969年から1974年までニューヨーク で暮した。 出かける時、村上開新堂のお客様で、北大路魯山人も褒めたとい う料理屋「丸梅」のおかみさんに、「あなた、何でもいいから見てきなさいよ」 と言われた。 本当にその一言はとてもありがたく、道子さんは「やがてはう ちの商売をするのだろうから、「食」は一生のテーマになる。だったら、片端か ら見て、味わって、作ってみればいいかな」と思ったという。 きっちりとし たレシピが載っているニューヨーク・タイムズの、料理やお菓子を片端からつ くってみた。 現地の材料を使い、横文字のままのレシピで作るのが面白くて、 子育てをしながら、いろいろな料理を作って、お客さんをもてなしていた。

 帰国後、キッコーマンから『新しい暮しの味』(1975年刊、非売品)を出し てもらい、以来、キッコーマンの料理講習会の仕事をするようになる。 1981 年、日本に住む外国人を対象に、醤油を使った料理コンテストが実施され、審 査員を務めた。 各国の家庭料理が山のように応募されてきたので、いろいろ な国のさまざまなところが見えてきて、面白かった。 1995年から10年間は、 各国の大使館、公使館の方を迎えて、3、4品の料理を作ってもらう講習会も催 した。 ただ「おいしいな」「変わった味だ」などという味一本でない、料理の 奥底に流れているもの、あるいはなにか昔から脈々と伝わってきたものを感じ られるようになる、意義深い体験だったという。