「心の洗濯屋」「納得」「覚悟」2017/09/12 07:06

 “秀さん”高井秀次(藤竜也)の評伝を書いたこともある評論家の立木公次 郎(きたろう)が、“姫”九条摂子(八千草薫)のインタビューに「やすらぎの 郷」へやって来る。 「“姫”の永遠の恋人」千坂浩二監督が戦前、戦意高揚の ために撮ったフィルムがGHQに没収されていたのが見つかり、それを見せた。  戦闘の場面のほかに、アッツ島で玉砕する千坂が出征する直前に京都で九条摂 子を撮った別れの場面もあって、“姫”はインタビューを拒絶する。

 戦前から活躍した女優の“姫”九条摂子に関連して、107話では「女優の仕 事」についての倉本聰の考えが述べられた。 女優は、人々の心を離れないで いる日頃の苦しみや悲しみや嘆きを、きれいに洗い流し、一刻忘れさせ「感動」 という二文字で包んであげる「心の洗濯屋」なのだ。 “姫”の果たして来た 役割は、神がこの世に送り込んだ天使のような「洗濯屋」だ、と。

 その“姫”が身辺整理をし、様子がおかしいと、付き人が菊村栄の所に相談 に来る。 その夜、“姫”が海岸で着物を切り裂きながら「♪あした浜辺を さ まよえば 昔のことぞ 忍ばるる」と「浜辺の歌」を歌っているのを、菊村栄 は目撃する。 医師である名倉理事長に聞くと、末期の肺がんで脳にも転移し ているという。

 芥川賞候補になった濃野佐志美の井深涼子(野際陽子)が発表の当日、着物 にめかしこんで、菊村栄を「鯉の刺身」の「山家」に呼び出す。 一応本命と いう濃野佐志美は、もし受賞したら大騒ぎになるがどうすると聞かれて、死に ましたってことにしてもらう、書くことはウニノスノコ、モズクアエコで続け る、「この仕事をやるのは、賞や名誉のためではない」と話す。 それから“姫” の病状を聞いて、「人って、いつかこういうことがあるのね」と。 野際陽子が、 自らの人生の最後に、こんなセリフを言っていたのだ。

 “姫”九条摂子のために「やすらぎの郷」を創設したともいえる加納英吉(織 本順吉)が、密かに“姫”と最後の別れに来た浜辺の夜も、菊村栄は偶然目撃 する。 その最期が苦しいものにならないようにと、菊村栄が医師の名倉理事 長に涙ながらに頼んでいた、“姫”九条摂子が亡くなった。 名倉理事長は菊村 栄に、その最期が穏やかなものだった、“姫”はその前から自らの人生に「納得」 をし、「覚悟」が出来ていた、と語るのであった。