鈴々舎馬るこの「鮑熨斗」 ― 2017/10/03 07:12
馬るこは、ピンクの羽織、空色の着物で、ボワッと出た。 3月に真打昇進 し新真打と言われていたが、9月に五代目三木助たち三名が真打になり、今お 披露目中、影が薄くなった。 三木助とは入門が同じだが、香盤は一つ私が上、 落語協会の事務局に履歴書を提出した受付順、師匠の馬風が副会長で、忖度が あったかも。 馬るこの名は、おかみさんに付けてもらった。 気に入ってい るので、真打になってもそのままにしたが、三木助とくらべると軽い名前。
甚兵衛さんは、人がいい。 おっかあ、おナカが空いて、フラッとした。 お 米ないよ、お金もない。 お前さんが働かないからだよ、蟻と一日遊んでいた りして。 隣の山田さんで、50銭借りておいで。 駄目だ、こないだも「お金」 と言おうとして「お」って言ったら、お金ないよ、飴玉ならって、飴玉もらっ た。 私が、女房のお光がって、言いな。 お光さんが言ってるのかい、50銭 でいいのか、1円、5円持ってくか。 何でお光ならいいんだ? 信用が違う、 50銭持ってきな。
50銭借りてきた、米を買ってくるか。 ダメだよ、魚屋さんで尾頭付を買う と、1円に化ける。 尾頭付をくれ。 目の下一尺の鯛、5円。 50銭にまか らないか。 ふざけんな、目刺し一山なら…、尾頭付どうするんだ。 大家さ んの婚礼か、鮑三つで60銭だけど、50銭でいい。 50銭で買うから、俺から 60銭で買ってくれねえか。 篭に入れてやるよ、大家さんは鮑が好きだ、喜ぶ よ。
篭に入れてくれたのかい、鮑じゃないか、片貝だけれど、まあ、いいか。 大 家さんのところで婚礼祝いの口上を申し上げないと、教えるから。 二回メシ 食ってないんだ、頭の中、真っ白だ。 今日は結構なお天気でございます、う けたまわりますれば、お宅様の若旦那様に、お嫁ご様がおいでになるそうで、 おめでとうございます。 いずれ長屋からツナギが参りますが、これはツナギ のほかでございます。 とても覚えられない。 口移しで教えるよ。 おもて はまだ明るい、雨戸閉めて。
こんにちは、森進一です、結婚して下さい、うけ玉川カルテットに新メンバ ー、大田区の、港区の若旦那のうま煮、オノヨーコ様がおめでとうございます、 いずれウナギが参りますが、これはほかでございます。 何となくわかった、 婚礼の祝いに来てくれたんだな。 これは鮑だな、お前の一存か、女房のお光 さんも承知なのか。 1円下さることになっています。 「磯の鮑の片思い」 で縁起が悪い、持って帰れと、鮑を放り出す。 持って帰りますから、1円下 さい。 馬鹿!
おまんま食いてえよ。 どうした、甚兵衛さん? 鳶頭、これこれこういう わけで。 鮑は、縁起のいいものだ。 大家か、あいつも鮑好きだ。 放り出 したのか、許せねえ。 10円になる啖呵を教えてやる。 大家に、もらった祝 いの品の熨斗紙をはがして返すか、有難く頂くか、聞くんだ。 有難く頂くっ て言ったら、土足で上がるんだ。 鮑は、アマ、今は日馬富士って言わなきゃ あならないか、海女ちゃんが海に潜って、腹につけて上がってくる、女の腹じ ゃないとつかないんだ。 鮑熨斗にするには、仲のいい夫婦が一晩かかってつ くらないとできない、その根本の鮑を何で受け取らないと言うんだ。
そこで鮑問題を二つ、出してくるから、こう答えろ。 一問、丸く「のし」 と書いてあるのは? 生貝でございます。 二問、寿司屋の暖簾にある「し」 を長く書くのは? 鮑のむきかけで、梨や柿を剥いても同じ。 甚兵衛さん、 大家のところで、一問を正解、二問も正解したが、最終問題が出た。 ポチ袋 に「乃し」とある「杖突のし」とは何だ? 土下座して、アワビを申し上げま すと言っているところ。
馬るこの「鮑熨斗」、前・新真打らしく、とても面白かった。
最近のコメント