入船亭扇遊の「文違い」前半 ― 2017/10/04 06:30
自分より汗っかきの人が前に出ると、嬉しい。 体質なので、ご勘弁を。 男 と女のトラブルは、古今東西。 私、山尾志桜里という方は好きです。 あと は知らない。 これ聞かないことにして下さい。 四宿に花魁がいた。 客の いい所をくすぐる。 ほめようがない人でも、まず、ちょっと驚く。 こちら 容子がいい。 <他人(ひと)は客、おのれは間夫と思う客>。 間夫、虻み たいなツラして。
よく来てくれたね、お金出来たかい。 十両しか出来なかった。 親父が下 で待っているんだよ。 育ての親の二十両の無心、それで縁を切ってもよい、 今度限りだと。 在から来る角蔵ってのが、いるんだよ。 はい、半ちゃんだ から遠慮はいらないよ。 角蔵さんが六番に。 向う前かい、あの田印、筒抜 けじゃないか。
上草履で、パターリ、パターリ。 お前さん、生きてたのかい。 ちょっく ら、こけこ、こけこ。 何本手紙出しても、返事がないじゃないか。 忙しか んべ。 こないだ近江屋に登楼(あが)ったのは、わかってるんだ。 あれ、 どうして、上(かみ)の村の十次郎の付き合いだ、浮気ではない。 あそこの アマッコは長いツラで、馬が紙屑籠くわえて、鰻をぶら下げたようだった。 お 前さんは、芯が粋で、上辺が野暮なんだから、私とお前さんの浮名は、新宿中 で知らぬ者はない。 おっ母さんが患っているから、お百度踏んでいる。 医 者が人参という高い薬を飲ませなければ治らないというんだ、二十両もする。 人参なら、おらが村では一分も出せば、どっさりくる。 唐人参だよ、お金、 貸しておくれよ。 ゼニねえだ、懐に十五両あるが、おらの銭じゃない、上(か み)の竹松の馬、引っ張って帰らねばならない。 おっ母さんを殺す気か、死 ぬよ。 もういいよ、頼まない、夫婦約束は今日限りだ。 馬とおっ母さんを、 一緒にするような人とは…。 おらが悪かった、謝る。 金やるから、持って け。 何もお前さんに謝らせて、お金をもらうような、そんな働きのある者じ ゃない。 年期(ねん)が明けたら、ヒーフになる仲だ。
あんな所から、覗いてちゃあ、わかるじゃないの。 たいへんなツラだな、 鼻が天井向いてて、煙草の煙が上へ昇る。 半ちゃん、十五両出来たから、五 両出しておくれよ。 何とか十五両で話をつけなよ、なろうことなら今日のと ころは…。 いいです、あの親父で生涯苦労させられてもいいんだね。 わか った、わかった、五両、持って行きなよ、謝るよ。 何もお前さんに謝らせて、 お金をもらうような、そんな働きのある者じゃない、すみません。 ここに二 両ある、親父に美味い物でも食って帰れって。 お前さんにこんなことしても らって、いい人だね、ちょっと待っていておくれ。
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