皇后様と末盛千枝子さん2017/11/03 06:39

 皇后様は、1998年のIBBY(国際児童図書評議会)ニューデリー世界大会で 基調講演をして下さる予定だったのが、その矢先にインドが核実験をしたので、 政府は皇后様にインドへ行って頂くわけにはいかないと決定した。 IBBY副 会長の島多代さん(松本正夫先生のお嬢様)と末盛さんは、ビデオによる講演 という方法もあるとNHKなどに働きかけ、それを実現する。 収録を二日後 に控えた朝、原稿を校閲したディレクターの若い女性が、お話のキー・ポイン トに疑問があると言ってきた。 新美南吉の『でんでん虫のかなしみ』は、皇 后様のお小さい時には、まだ出版されていないはずだという。 皇后様に連絡 すると、すぐに陛下に相談され、「新美南吉が実際に書いた時期と、その本が出 版された時期が違うかもしれないから、それを調べてはどうか」という沈着な アドバイスを頂いたとのことだ。 そして、新美南吉が書いて雑誌に発表した 時期は、皇后様がそのお話を叔父様か叔母様か、どなたかにお聞きになった時 期と、齟齬がないということが確認された。

 ご講演はニューデリーの会場で放映され、ゆっくりと丁寧に語りかける皇后 様のお言葉は、人々の心の奥底にしみいっていくようだった。 終ると「涙が 出るほど美しい」と感激している人がたくさんいて、日本人と見ると握手を求 められた。 NHKは、数時間後に52分のご講演をノーカットで放映し、反響 が大きかったので、何回も放送、英語のバージョンには日本語のテロップをつ けて放送した。 日本中で見てもらうことができた。

 末盛さんがこのご講演を本にすることをお願いして、『橋をかける』という本 になった。 安野光雅さんが、カバーと扉に素晴らしく美しい麦の絵を描いて くれた。 お話の中で、皇后様は読書を通して、他の人の悲しみを知り、喜び を知り、愛と犠牲が分かちがたいということを知ったこと、そして、誰しも、 何らかの悲しみを背負って生きているということを小さい時に知ったと、新美 南吉の『でんでん虫のかなしみ』を引用して、語っておられる。

 末盛千枝子さんの『人生に大切なことはすべて絵本から教わった』(現代企画 室)という本の中で、森鷗外『即興詩人』の講演をしている安野光雅さんは、 末盛さんの依頼に、講演はしない建前を崩した内幕を「皇后様に英訳を頼みに 行くという編集者は、まず、いないですよ。皇后様に頼みに行った人なんて。 まどみちおさんの本もですね。」と明かしている。

 10月21日(?)、皇后様のお誕生日の会があって、古澤巌さんのヴァイオリ ンに、皇后様がピアノを弾かれ、『友情ある説得』と『ドクトル・ジバゴ』ララ のテーマが演奏されたそうだ。 皇后様は『友情ある説得』を、「千枝子さんの ために弾いたのよ」と言われたとか…。 古澤巌さんのブログを見たら、その 日のタイトルに「おめでとうございます」とあるだけで、どこで何があったか は触れず、「無事終了。」「沢山どらやき?桐箱!」「皆が幸せな日でした。」「あ りがとうございます。」とあった。

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