柳家さん喬の「うどん屋」前半2017/11/06 07:33

 さん喬は本格的な紋付き黒尽くめ。 タクシー運転手の対応が変わったと言 う。 昔、三宅坂の国立劇場までと言って乗ったが、返事がない。 聞こえま したかって何度か聞くと、ようやく、聞こえてますよ、と。 停めて、停めて、 と料金払って、歩いたことがあった。 最近は、○○タクシーの○○です、ど こまでお供しましょうか、と。 ドアに評価のマークがAとかAAとか、タク シーセンターでつけるらしい。 B、Cというのもあるが、Dは見たことがな い。 新宿の末廣亭まで乗ったら、40分間、愚痴を聞かされたことがあった、 女なんか信じちゃあいけないよ、と。 ハイ、ハイ、と返事がよくて、噺家さ んですねって言われて、お釣りはいらないよ、余計に祝儀をやったりする。 「蔵 前駕籠」という噺は、よく出来ている。

 寿司屋で威勢よく「いらっしゃい」、お二人さんご案内、いらっしゃい、いら っしゃい、いいまぐろがあります、江戸前の。 江戸前のまぐろ? 「忍ぶ」 という商売もある、葬儀屋、屑屋。 何か、お払い物はありませんか。 忍ん でいたほうが、商売になる。 一調子上げて、そば屋。 屋敷で中間連中が博 打かなんかしていて、なべ焼きうどんを呼び込んだりする。

 目出てえな、「♪牡丹は持たねど越後の獅子は、おのが姿を花と見て、庭に咲 いたり咲かせたり」、うどん屋、ちょいと、うどんのつゆの薬缶を下ろしてくれ ねえか、いい火だな、手をあぶっていいか。 お寒ぶうございます。 どうだ、 景気は? 不景気で。 うどん屋はいいな、火をかついで世間を広く歩けて。  仕立屋の多平を知ってるか。 知りません。 いい奴だ、長屋の隣合わせでな、 親類同様の付き合いだ。 娘のお美代坊、十八が今晩婿を取ったんで、祝い物 を届けた。 婚礼の席に出てくれってんで、婆さんと二人で行った。 かみさ んとお美代坊が、おじさん、こっちよなんて言うんだ、アハハハ。 俺、嬉し くなっちゃってな、床の間の前に座らせられて、背中がむずむずした。 多平 がばかに気を遣う。 うちの婆さんが、お茶に何か浮いているのを飲んでいる。  桜湯、縁起物だそうだ。 銭かけて贈った茶箪笥が、床の間に飾ってある。 お 美代坊が白い着物で出て来た、白で鶴の刺繍がしてあるのがきれいだった。 あ の形、どこかで見たことがあると思ったら、箪笥屋の看板だった。 両手をつ いて、おじさん、さて、このたびは、いろいろご心配頂いて、ありがとうござ いました、なんていうんだ。 さて、このたびは、なんて、なかなか言えるも んじゃない、綱渡りの口上ぐらいだ。 婆さんなんか、赤ん坊の時から知って いるからな。 いろいろお世話になって、ありがとう存じます、なんて生意気 なことを言った。 うどん屋、めでたいなァー。 何だよ、お前はどうなんだ。  じゃあ、おめでとうございます。 じゃあだと、不実な奴だな、お前は。 火 を足してくれ、めでたいんだから。 ボヤの火元は、うどん屋かって言われる ぞ。

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