三遊亭小遊三の「付き馬」後半2017/11/10 07:15

 田町(たちょう)の伯母さん、去年の暮れに、亡くなったんだった。 で、 もって、田原町におじさんがいる。 信じられない。 商売が言いにくい、早 桶屋、葬儀屋なんだ。 けっこうな商売じゃないか、はかゆきがするって。 す ぐ先だ、28円50銭と2円30銭だろ、50円もらう。 右から左に、あげるよ。  遠慮しなさんな、釣りは取っときな。 帯、先が猫じゃらしになってるじゃな いか、いっぺんだけ締めただけの茶献上の帯、もらってくれるか。 帯が喜ぶ よ、ヨッ! お前さん、ここで待っていて。 逃げちゃあ、いけませんよ。

 (大きな声で)お早うございます、おじさん、おじさん、どうも朝っぱらか ら、おじさんにお願いがありまして。 こしらえて頂きたいんですが。 (声 をひそめて)実は、あそこにおります男の兄貴が、腫れの病で亡くなりまして。  太っているところに、腫れの病で、もうバカに大きくなっちゃって、普通の早 桶じゃあ、間に合わない。 で、図抜け大一番小判型ってやつを、どこでも断 られて、(大きな声で)ぜひとも、こしらえてもらいてえ、おじさん。 それは 気の毒だ、職人がやってみてえって言ってるから、こしらえてやろう。

 あいつは兄貴に先立たれて、ポーーッとしているから、請け合うって言って やって下さい。 私が請け合ったからには、間違いがない、心配しないように。  私はこの先に用があるんで、出来たら渡してやって下さい、お先に失礼。

 まあ、お掛けなさい、まだ間があるから。 大変だったですね。 ええ、ま あ稀にはある。 長かったんですか。 ゆんべ、一晩で。 急に来たって、や つだ。 急に、いらっしゃったんです。 お通夜は、おすみで。 お通夜…、 ええ、芸者を揚げてワーーッと、どんちゃん騒ぎで。 仏様は、喜んだろう。  ええ、大変なお喜びで、裸でカッポレを踊ったりして…。 お前さん、気を確 かに持って、落ち着きなよ、そうだ何か、つく物があると言っていたな。 あ あ、帯が一本つくと。

 出来たか、前へ運んで。 急ぎの仕事で、まあ勘弁してくんねえ。 大きい 早桶ですね、どういう方の、ご注文で。 どういうって、お前さんが誂えたん だ。 お前さんの兄貴が、腫れの病で死んだんだろ。 あたくしに、兄はいま せん。 なにっ、さっきのアレがそう頼むから、こしらえたんじゃあないか。  でも、あの人は甥御さんでしょ、「おじさん」って言ったら、返事してたじゃな いですか。 初めて、来た人だ。 アーーッ、やられちゃったよ。 だまし取 られた金が5円、どうなるんです。

 私は、吉原(なか)の若い者で…。 馬か、馬鹿だねえ、お前は逃げられた んじゃねえか。 おかしいと思ったんだ。 こんな風呂桶の化け物みたいの、 売り口がねえ。 職人の手間は負けとこう、木口の代7円払って背負って帰っ てくれ。 縁起でもない。 何を、この野郎、おれんとこの商売にケチをつけ るのか。 お前がドジだから、こんなことになるんだ、みんなで背負しちゃえ。  背負いますよ、泣いてますよ。 7円置いて、持ってけ。 7円もなにも、1文 もない。 おい奴、吉原(なか)まで、馬に行け。

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